俺は空席の隣の机を見ていた。みゆきの席である。二年生なのに三年生の特進クラスの教科書を使っていた天才キャラ……。俺は休み時間に保健室に行ってみる。「みゆきちゃん、居る?」その言葉に奥から声がする。「おーワトソン君」相変わらずの制服にポンチョ
朝、ショーホームルームの後のことである。「ワトソン君、奇遇だね」隣の席からみゆきが声をかけてくる。確かその席は空いていたはず。「その席は……?」「うん、保健室登校から久しぶりに教室に来てみたの」「みゆきちゃんは三年生の特進クラスでなかったの
無事に携帯番号の交換を終えるとみゆきはソシャゲーを始める。「ワトソン君、フレンド登録してくれないか?」知らないゲームを外でダウンロードするのは抵抗があるな。ここははっきり断ろう。「そうだな、最近のソシャゲーはコミュニケーションが無いから、意
俺は痛めた足を保険の先生に見せていた。シップを張ってもらい、帰ろうとすると。「ワトソン君、ボクは一年以内に死ぬのだよ」さいですか……。みゆきの言葉など関係ないと思い、やはり、帰ろうとする。「ままま、たい焼きが三つあるので一つ食べていかないか
冬、この街にも雪の季節がやってきた。この高校の歴史は古く、創立は旧制中学からの伝統をもつ。俺はサッカーの授業中にクロスプレイで足を傷めてしまった。軽い捻挫であろうが取りあえず体育教師の指示で保健室に向かう。うん?先客がいる。ショートカットで
「エ・リ・カ」朝、高校の昇降口で道玄坂が後ろから抱きついてくる。「道玄坂、朝から元気だな」「おう、むぎゅーとだよ」女子同士のスキンシップも良い物だなと考えていると、甘酸っぱい、質の高い香りが立ち込める。黒刀使いと同じ香りだ。「道玄坂、その香
ルカさんはバスケ部の練習に立ち合い。声を上げていた。キャプテンとして復帰も間近であった。わたしはマネージャーとして遠くから見守るだけである。あの熱いキスも嘘のようである。完結したカミガリの物語を渡すと無言で原稿が帰ってきた。消えてしまった翼
家に帰ると日課であるカミガリの話を考える。神々が自然のエネルギーを使い人々から生気を奪うのを止めさせる話をつめていた。アリシアの様に呪われた力でカミガリをしている者はいずれ死が待っている。民と神々の争いはそんなに簡単に決着はつかないのであっ
わたしはカミガリの物語の完結部分を考えていた。暗黒剣が折れて翼乙女に食べられる。ダメだ、バットエンドしか思いつかない。そもそも、神々が生気を吸い取るのは生きる為で、家畜扱いの民からカミガリが生まれたのである。双方生きる為の戦いである。カミガ
わたしは暗黒剣の使い手である。黒き剣は紅色に光、血を欲する。それが神々であれ子供であるかは関係ない。そう、翼乙女であっても同じことだ。翼乙女に会う時は事前に忠告してある。剣先に気を付けろと……ふ〜う、落ち着いてキスもできない。そんなわたしを
ルカさんに投薬治療が本格的に始まった。天井をぼっーと眺めているルカさんは完全な病人だ。安定剤なのか抗うつ薬なのかは分からないがかつての輝きは無かった。「ありがとう、こんな僕でも会いに来てくれて……」わたしの小説は目を通してくれるがアドバイス
神々は残酷である。腹が空けば子供でも容赦なく生気を吸い取る。生気を吸い取られた子供は大人と同じように多くが自ら命を断つ。ただ、違うのは子供の自殺は社会的に不安定を起こすことが多い。自殺した子供の親はヒステリックになり、カミガリに八つ当たりを
家に帰るとご飯もそこそこにして執筆活動に勤しむ。物足りない……わたしは動画投稿サイトにアクセスして気持ちを高める。ストーリーを百合にしたので、流している音楽は昔の百合アニメのエンディング曲であった。神々の一人である可憐でカッコいい翼乙女とカ
ガチ百合の話にすると決めたのだが、アイディアが浮かばない。片想いのルカさんには小説を持って行く時だけ会える。孤独のお互いを繋ぎ留めているのは小説だけであった。主人公とガチ百合になる神の登場シーンが上手く書けない。しばしの沈黙の後でキーボード
ルカさんのお見舞いの前の空いた時間を病院の一階にある小さな売店で煎餅を買って、ロビーで食べていた。バックを開けて今日のカミガリの物語を確認する。湿地帯に住む神々の一人と戦う話だ。足元の悪い沼地でスライム状の体の神々の一人は強敵であった。うー
さて、暗黒剣の入手方法だが、滅びたミヤコの地下にするか悩んでいた。病院からバスの中でずっと考えていたが良いアイディアが浮かばない。家に帰ってから自室でパソコンに向かい頭を掻いていると、たどり着いたのが神々と同様に人を喰らう黒龍のツカに刺さっ
「ルカさんは小説を読みます?」「平均以上は読むと思うよ。それがどうしたの?」わたしはバックを開けると『カミガリ』とタイトルだけ印刷された一枚の紙を手渡す。「これは……?」「今、構想中の小説なの。神々が民から生気を吸い取って、世界が荒んでいく
高校生活も二年目、わたしは県内強豪のバスケ部のマネージャーをしていた。今日も放課後に練習であった。あれ?チームのキャプテンである憧れのルカさんがいない。第一体育館から外を探してみると。自販機の前で松葉杖のルカさんが顧問の先生と話している。わ
家に帰るとご飯もそこそこにして、パソコンに向き合う。動画投稿サイトにアクセスして気持ちを高める。ストーリーを百合にしたので、流している音楽は昔の百合アニメのエンディング曲であった。可憐でカッコいい翼乙女と暗黒剣の使い手のカミガリであるアリシ
温かい……。触れ合う手のひらはわたしの心を奪った。美しき神は翼乙女と名乗り、更に物理的距離が縮まった。わたしは孤児院で育ち、本当の名前も知らないのである。愛称はアリシアでそう呼ばれていた。……。「どう?カミガリと神の恋愛小説にしたのだけど」
わたし達は死神もどきの戦いの後、一階に来ていた。感じる……思念の塊の気配だ。わたしとミヤビは思念の塊を追って調理実習室に入る。銀鏡壁を広げると死神もどきが二体現れる。「一対一にするしかないね」わたしの弱気な言葉にミヤビは凛として頷く。少し気
わたしは家でパソコンに向かっていた。片想いのルカさんには小説を持って行く時だけ会える。孤独のお互いを繋ぎ留めているのは小説だけであった。主人公とガチ百合になる神の登場シーンが上手く書けない。姉系の神ではありきたりだ。ロリババアにするか悩んで
放課後、黄昏によって闇が広がる時間である。わたしとミヤビは三年生の教室に居た。静かに抜刀して銀鏡壁を広げる。黒いローブに顔が骸骨、大きな鎌を手にしている思念の塊が現れる。「ふ、死神のつもりか?」わたしの問に答える気はないようだ。わたしは間合
「このカミガリの小説はラストどうなるの?」わたしにルカは病室で問うてくる。「えへへへ……まだ、決めてないのだよ。カミガリは市民の味方だから、全部神々を倒しちゃうのかな」「それもつまらないね。僕なら神々から力を奪って共存の話にするよ」「悪い神
今日も道玄坂とランチである。うん?道玄坂が必死になってメッセージアプリに書き込んでいる。呪いにしか興味がないと思っていたら。友達がいるのか……。少し気になったので聞いてみると。「あ、これ、呪い術者同盟の『橘川 麗』よ」呪い同盟……聞くんじゃ