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2021年04月10日12:49

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砂粒のような恋心 2

「ルカさんは小説を読みます?」
「平均以上は読むと思うよ。それがどうしたの?」
わたしはバックを開けると『カミガリ』とタイトルだけ印刷された一枚の紙を手渡す。
「これは……?」
「今、構想中の小説なの。神々が民から生気を吸い取って、世界が荒んでいくのをカミガリの少女が世界を救う為に神殺しをする内容なの」
まだ、タイトルしか決まっていない小説の話で大丈夫か不安になるが、ルカさんは目を輝かせている。
きっと、小説が好きなのであろう。
「是非、最初の読者になりたいよ」
ルカさんの言葉にわたしは胸がキュンとなる。これが恋心なのか……。
そんな話をしていると病院にバスが到着する。
「今日は診察の後で入院の手続きをしなければならない。不安な道のりだったけど、一緒にいてくれてありがとう」
わたしはここまでしか行けないのかと残念な気分になるが仕方がない。
「お見舞いに来るわ、病室が決まったらメールちょうだい」
「あぁ、約束する」
わたしは病院のロータリーで帰りのバスを待つことにした。
その待ち時間にメモを取り出して小説の主人公の名前を考える。
孤児院で育った過去を持つ『アリシア』にしよう。
使う武器は呪われた暗黒剣で、その暗黒剣を得る物語も考えなくては。

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