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2021年04月17日13:10

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砂粒のような恋心 8

ルカさんに投薬治療が本格的に始まった。
天井をぼっーと眺めているルカさんは完全な病人だ。
安定剤なのか抗うつ薬なのかは分からないがかつての輝きは無かった。
「ありがとう、こんな僕でも会いに来てくれて……」
わたしの小説は目を通してくれるがアドバイスはない。
そんなルカさんにわたしは何かが吹っ切れた。
「ルカさん、飴、食べます?」
「あぁ、食べるよ」
わたしはポケットから飴を取り出すと自分の口に入れる。
翼乙女のした、大人のキスを望んでみる。
ただ、静かに座っているルカさんに近づき、唇を重ねる。
ルカさんの口の中に飴を入れると、わたしは微笑んでみる。
「飴、美味しいですか?」
「は、はい」
少し刺激的だったのかルカさんは目を丸くしている。
わたしはルカさんの手を握り自分の胸にあてる。
「ドキドキしているでしょ」
大人のキスに確かにドキドキしたがそれを伝える行為もとても積極的であった。
ルカさんの温かい手を胸の真ん中に当てて、幸せを感じる。
「えへへへ、女の子にここまでやさせたのだから、ルカさんもそれに答えてね」
そう言うとわたしは原稿をバックに入れて帰る支度を始める。
それは、ルカさんが言葉を探してあたふたしていたからだ。
「今日はお終い」
わたしは病室を出るとトイレに向かう。
女子トイレの鏡を見ると。わたしは幸せそうであった。
やはり、翼乙女になった気分だ。

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