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2021年04月24日06:30

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銀鏡の華 20

「エ・リ・カ」
朝、高校の昇降口で道玄坂が後ろから抱きついてくる。
「道玄坂、朝から元気だな」
「おう、むぎゅーとだよ」
女子同士のスキンシップも良い物だなと考えていると、甘酸っぱい、質の高い香りが立ち込める。
黒刀使いと同じ香りだ。
「道玄坂、その香水……」
道玄坂は、また、思念の塊にとりつかれて、催眠術でも始めるのかと心配になる。
「いいでしょ、いつの間にかにバックの中に入っていたの」
怪しい……普通はバックに突然に香水など入っていない。
これはどうしたモノかと難儀する。
その香水は質の高い良い香りなのだが、道玄坂が黒刀使いとして相手の感覚を麻痺させて獲物を呼びこむ香であった。この香りで道玄坂に何が起きても不思議ではない状況である。
放課後に新しい香水をあげるから落としてきなさいと窘める。
わたしは三千円で買った自前の香水をロッカーから出しておく。
なけなしのわたしの小遣いが……。
仕方がない、道玄坂に黒刀使いに戻られては問題だから。
でも、誰が道玄坂に怪しい香水を持たせたのだろう?
やはり、この学園に何かが起きている。
そして、放課後になり道玄坂に香水を渡して怪しい香水と交換する。
「ミヤビ!いるか?」
「はいよ」
わたしの言葉に背後から突然に現れる。
あれほど後ろから現れるなと言っておいたのにこの女狐は何を考えているのだろう?
愚痴っても仕方がない。
ミヤビに香水を渡してみる。
「道玄坂から回ってきたのか。ま、わたしに預けるのが正解ね」
わたしはミヤビに香水を預けて安心していると。
「エ・リ・カ」
道玄坂が後ろから抱きついてくる。
またか……うん?道玄坂のまとっているのは今度は安い香りだ……。
不意にお金の事を思い出す。
あ〜ぁ、三千円でまた香水を買おう。
わたしが道玄坂の腕を振り解くとミヤビが何かニタニタしている。
女狐め……。

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