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2021年04月14日14:31

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砂粒のような恋心 5

ガチ百合の話にすると決めたのだが、アイディアが浮かばない。
片想いのルカさんには小説を持って行く時だけ会える。
孤独のお互いを繋ぎ留めているのは小説だけであった。
主人公とガチ百合になる神の登場シーンが上手く書けない。
しばしの沈黙の後でキーボードを叩く。
「わたしは神々の中でも将来は長になる存在、死闘の果てにその瞳に魅かれた、君を神々として迎えたい」
「残念だ、カミガリは選ばれた者だけがなることができる。民の期待には応えなければならない」
「なら、友達にならないか?」
孤児院で育ち、孤独なカミガリのわたしには心を揺さぶられる展開であった。
くっ、素直にその美しさに魅かれる自分が悔しい。
わたしは手を差しのべると美しき神は、わたしの手を取り抱き締める。
温かい……。
触れ合う手のひらはわたしの心を奪った。
美しき神は翼乙女と名乗り、更に物理的距離が縮まった。。
わたしは孤児院で育ち、本当の名前も知らないのである。
愛称はアリシアで、周りから、そう呼ばれていた。
……。
翌日、わたしは最低限の原稿を持って、ルカさんに会いに行く。
「どう?カミガリと神の恋愛小説にしたのだけど」
ルカさんは渋い顔をしていた。
「確かに禁断の恋であるね。しかし、大衆向けではないよ」
わたしがルカさんの言葉でしょげていると。
「大丈夫、個性が出ていて面白くなるよ」
優しいな……こんな小説でも誉めてくれた。
「うん、もっと頑張ってみるわ」
気がつくと、面会時間が終わりそうであった。
原稿を返してもらうと病室を後にする。
病院のロータリーでバスを待つ間も小説の続きを考える。
結果が出なければルカさんに会う理由がない。
他の神々をもっと残酷にしてみるか迷う。
神々の表現は信じている宗教によっては問題になるらしい。
冒涜と呼ばれたらどうしようか……。
しかし、それを心配するほどの読者はいない。
時代は炎上なる見えない化け物に支配されていた。

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