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2015年09月07日21:41

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巴(1)-深蒼海流

今、毎週の発行が待ち遠しいほどに興味を持っているマンガと言えば、かわぐちかいじの「ジパング−深蒼海流」くらいだと思う。
ここ1〜2か月ほどは、源平合戦の中の木曽義仲が中心に描かれていた。
木曽義仲が「いい男」に描かれていたのも面白かったが、それ以上に心引かれたのは、女大将の巴御前(ともえごぜん)だった。美人でもあり、木曽義仲の愛人でもあり、屈強な「武将」でもある。

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主君である木曽義仲に武蔵坊弁慶が襲いかかったときには、弁慶の前に立ちはだかり、主君の危難を救っている。女ながらに、力自慢の弁慶の薙刀に太刀打ち(薙刀打ち?)したのである。

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カッコいい。何度見ても、飽きないシーンだった。

ふと思ったのは、「こんなカッコいいシーン、平家物語の中にあったっけ?」ということ。
僕が読んだ岩波文庫版(「覚一本」を底本とする)をめくってみると第九巻の中の「木曽最期」に「巴」が出てくる。しかし、マンガのような(弁慶と打ち合うなどという)活躍は描かれていない。
平家物語の諸本には、「覚一本」のほかに 「百二十句本」「長門本」「延慶本」などがあり、また同じ題材を書いた 「源平盛衰記」などもある。これら別の系統の平家物語には、「巴」に関する詳しい描写があるのだろうかと疑問を持っていた。

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図書館で諸本を調べてみたら、巴に関する言及には多少の違いがあるようだった。見たところ、平家物語の諸本に比べると、「源平盛衰記」の記述が一番詳しいようだ。このことは、後で知ったのだが、ウィキペディアの「巴御前」の項目の中でも、以下のように触れられていた。

「巴御前が登場するのは軍記物語の『平家物語』『源平盛衰記』のみであり、当時の一次史料や鎌倉幕府編纂書の『吾妻鏡』には、その存在は確認されない。女武将であるという物語の記述は史実としては疑問があり、文学的脚色である可能性が高い。『平家物語』における巴御前の記述は至って簡略で義仲との関係も書かれていないが、より後の時代に書かれた『源平盛衰記』において大きく人物像が書き加えられている。」

なるほど。巴に関する記載の多くは、「脚色」であり、後の人の想像力(創作力)による「書き加え」なのかも知れない。

だとすれば、平成の時代のマンガ家が、「弁慶との打ち合い」という新たな「書き加え」を行うことにも、正当性があるのかも知れない。

■かわぐちかいじと巴御前
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