サン＝テグジュペリの描いた郵便飛行士の時代は、彼が「人間の土地」を執筆中にすでに終わっていた。その変化に、ある者は挑みつづけ、ある者は挫折していく。メルモスもギヨメも姿を消し、サン＝テグジュペリ自身も「世界は蟻の塚だ」と書き遺して、ほとんど自殺同然に地中海上に消えていった。
宮崎駿「空のいけにえ」（新潮文庫版『人間の土地』所収）
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前に、宮崎駿監督の「空のいけにえ」というエッセイに対して、「９９％の共感と１％の違和感」を感じると書きましたが、
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=130622276&owner_id=2312860
その「１％」とは、上に引用した部分の「自殺同然」という言葉です。
サン＝テグジュペリの「未帰還＝自殺」説というのは、一部ではまことしやかに伝えられており、Mixiの「サン＝テグジュペリ」コミュニティの中でも、そのような話があります。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=338393&comm_id=16376
年齢を省みず、古傷が疼く身体で周囲の反対も聞かず最新鋭機に乗って困難な任務に就くこと自体を「自殺同然」と評価するのであれば、それは分からないでもありません。
また、僕自身は自殺を禁忌だとは思っておらず、人の生き方の延長線上のひとつの選択としては、「自殺」という「最期」もあり得ると思っています。
サン＝テグジュペリが、拳銃やナイフ、あるいは服毒、入水などで自殺を図ったとしたら、それはあり得てもよいことだと思っています。
しかし、現役軍人であるサン＝テグジュペリが、軍の装備である偵察機を使って自殺を図るなどということは、およそ考えられないことです。
それは、彼が強く同胞意識を持っていた同じ飛行隊（�供檻械拡�行隊）の同僚たちが彼に寄せる強い信頼を真っ向から裏切る行為であり、限度を超えた背信行為であるからです。
サン＝テグジュペリという人物は、人徳や人望の人というよりは、むしろ様々な人間的な欠点を持った人間であると感じています。そのような人間が、理想や野望のために四苦八苦するところが、彼の生涯の興味深いところであり、そうしたものが垣間見られるところが、彼の作品の味わい深いところだとも想っています。
ある種の「身勝手さ」は、彼の属性でもあったとも想います。
しかし、祖国を解放するための道具であり、同胞や仲間の血と汗とによって飛んでいる軍用機を自分のために使ってはならないという最低限の分別を彼が失っていたとは思えないのです。
たとえ、彼がどのような絶望感に襲われていたとしても。
もし、何らかの心理により、彼が偵察機を使って自殺を企てたとしたら、彼の作品の中で描かれている「人と人との絆」などは、彼自身の行為によって、全て否定されたことになるでしょう。
そのようなことは、あり得ないことだと信じています。
個人的には、墜落原因は、比較的単純なハイポキシア（低酸素症）による意識喪失ではないかと考えています。
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