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2008年11月20日01:38

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「壱弐参之笑(ひふみのわらい)」(三三・山陽・茂山)

三三・山陽・茂山の「壱弐参之笑」
(サンザ・サンヨウ・シゲヤマノヒフミノワライ)
=柳家三三(落語)と神田山陽(講談)と茂山宗彦(狂言)のコラボの会
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=899192761&owner_id=949383

10月28日(火)19:00〜21:30 横浜能楽堂にて鑑賞
http://www.soja.gr.jp/schedule/item.php?id=1571
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若手真打ちとして人気実力ナンバーワンの呼び声高き柳家三三、
創作力抜群、疾駆する講談師神田山陽、
お豆腐狂言を定着させた茂山家から若武者三人(宗彦、茂、童司)。
この三組がひとつのお題を元に二作品ずつ計六作品を創作、競い合う!
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第一部
.狂言「附子(ぶす)」
 太郎冠者 茂山宗彦
 次郎冠者 茂山童司
 主人   茂山茂
     (神田山陽)
.講談「中山安兵衛高田馬場の駆け付け〜十八番斬り」 山陽→三三
.落語「風邪うどん」 三三→宗彦

第二部 (ヒッチコックへのオマージュ)
.講談「裏窓」   山陽
.落語「レベッカ」 三三
.狂言「梟山伏(ふくろやまぶし)」
 山伏 茂山茂
 兄  茂山宗彦
 弟  茂山童司
山陽、三三(as himself)

これもまた感想が遅れてしまったけれど、ほんとに楽しい会でした!
三三(さんざ)さんの落語は、吉弥さんとの二人会でおなじみだったし、
山陽さんの講談は、北陽さん時代に生で聞いて大感激したし、
もっぴーこと宗彦さんは「ちりとてちん」の小草若役で大好きになり、
この夏初めてご一門の舞台で見たばかり。
それぞれに期待していたけれど、こんなふうにジャンルを越えた
コラボレーションになっているとは知らなかった。

有名な中山安兵衛の講談を、山陽さんのあとを継いで三三さんが語り、
三三さんの江戸前の「風邪うどん」の後半を、宗彦さんが上方落語で続ける。
その意外性と芸達者ぶりに拍手!
狂言の舞台に登場する山陽さん、三三さんはさすがに動きがぎくしゃくして
あやうかったけれど、まあご愛嬌。
逆に狂言師の佇まいの、ぴしっと決まって綺麗なさまに改めて感嘆!
幼少時からの鍛錬の成せる技量がよく分かった。

「オープニング」

第一部、第二部の前に、山陽さんと三三さんが出てきて、
説明というか、キャッチコピーのような言葉が書かれた布を、
お互いの体で両端を支えて見せながら、自らの体で巻き取ってゆく
ロールプレイも楽しかった。
最初は三三さんがぐるぐるの出汁巻きみたいな格好で、布全部をまとい、
それを手ぶらの山陽さんが反対側で巻き取ってゆくのだけど、
ひょろっと高い三三さんと低めの山陽さんの凸凹コンビが、
黒の着物を尻端折りして、赤いステテコを見せた揃いの格好で、
ひょこひょこくるくるしてるだけでも面白くって笑ってしまう。

「附子(ぶす)」

ポピュラーで楽しい演目。ほんとに分かりやすく笑える。
狂言の格子柄の着物って大好き。その上につけている裃の柄も、
太郎冠者が大きな蕪(かぶ)、次郎冠者がトンボでとっても可愛い。
太郎冠者は宗彦さんによく合っている役柄だけど、
主人役の茂さんの声の良さにも惚れ惚れ。
本当に芯の通った強さのある、素晴らしい声なのだ。

太郎冠者と次郎冠者に、猛毒の「附子(ぶす)」を守るよういいつけて出かけたあと、
それが砂糖だと気付いてすっかり食べてしまった二人が、
工作を試みたところへ帰ってくる主人は、なんと山陽さんに替わっている。
裃は着けているものの、山陽さんオリジナルのジャージ柄の着物だし、
なんだかちょこんと小さいので、出てくるだけで笑いが起きた。
長袴で歩くのは大変だったことでしょう。

「中山安兵衛高田馬場の駆け付け〜十八番斬り」

まずは舞台中央に釈台が運ばれて来た。
さきほどの裃を取り、袖山に二本線が入った
ジャージ柄の着物姿になって、ほっとした様子の山陽さん登場。
全国の落語家700名に対し、講談師は70名で、
イリオモテヤマネコ100匹よりも少ない絶滅寸前種だとの話をひとくさり。

張り扇の音をひびかせながら語り出したのは、
堀部家に入るまえの中山安兵衛の、有名な高田馬場の十八番斬り
(十六番とも言われてるようだけど、その方面には詳しくないので
どちらかよく分からない)。まさしく立て板に水の名調子。
飲んだくれの安兵衛をクサす近所のおばちゃんがおかしい。
しかしいつもと違う段取りであせったせいか、懐に手拭を入れるのを忘れた
そうで、手紙を読むくだりでそれが使えず、扇で代用したのは勝手がちがったらしい。
そういうことも全部笑いのネタにして、無類に面白かった。
適当なところでパン、と切るのも自在で、気持ちのよい無責任という感じ。
くぐり戸をくぐって退出。

で、次に出てきた三三さんがその続きを語りだすのだが、
普通の高座と違って橋掛かりを歩いての出が、間が持てないとのぼやき。
「もっと斬ってからあとだと思ったのに」と言いながらも、
ばしばしと語るのがさまになっているので、驚いた。
あとで褒められて「いやあれは趣味ですから」とおっしゃってたけど、
なかなかどうして、普段からよくなさってるんだろうと思われる達者なもの。
すごいなあ、と感心。退出はやはりくぐり戸。

「風邪うどん」

釈台が片付けられ座布団だけになって、三三さん再び橋掛かりから登場。
くるっと回ってくる短い間にあっという間のお着替え。縞の着物が粋。
最近の若者の浴衣に対しての毒舌マクラには笑ってしまった。素敵ー。
江戸ではもちろん蕎麦が主体なので、うどんは粋じゃないというイメージ。
蕎麦屋の売り声の次にやってみせる「な〜べや〜き、うどーん」
(「い〜しや〜き、いも〜」の節で)
というのが、やけに重たくて野暮な感じ。
酔っ払った客にからまれ、一銭にもならずくさってしまうあたりまでやって、
すいっと引っ込む。

続いて出てきたのは宗彦さん。黒紋付に袴姿。
こちらは上方落語なので、売り声も「そーや、うー」である。
博打をやっている家から小声で注文され、思いがけぬ大口の稼ぎに喜び、
再び小声で注文してきた客に期待してのやりとりから、最後のオチまで。
これはまさしく、吉弥さんそのままの写しだった。
吉弥さんのうどんすすりは、一度高座を見たら忘れられない絶品。
この演目も何回か見ているから、そのうどんの麺の湯きりの手つき、
目のみはり方、唇のかんじまで、そのまんま。
吉弥師匠と一対一の稽古が目にうかぶほど。
吉弥ファンの友人たちにも大受けで大爆笑。
これは楽しいなー。このご縁もちりとてつながりだけれど、
機会があればまた是非とも見てみたい。

「裏窓」

ジャージ柄着物の色違いに着替えて登場の山陽さん。
このかたの創作ものは、本当に破天荒に面白くて、場内をかっさらう。
ヒッチコックのこの映画は、だいぶ前に見たけれど、
共通しているのは主人公が部屋から出られず、
望遠鏡で思いがけないものを見ることくらいで、全然別のお話。

ケンカをしたという理由で、夜の外出をとめられてしまった
修学旅行の高校生・三浦くんが主人公。
祇園に行って身請けがしたいという、とんでもない奴。
「だんだん」のおちょくりには大笑い。
突如部屋に現れた不思議な老人からが出した望遠鏡を、
なけなしの小遣いをはたいてのぞかせてもらうと、
そこは慶應3年11月15日の近江屋で、坂本龍馬と中岡慎太郎が見える。
さて馬暗殺の真相は…というところで、
唐突に続きはまたこの後で…と切り上げられてしまった。
いつどこででもこの続きはまた、と切れる講談ってすごいな。
でもいささかおっちょこちょいな三浦君がそのあとどうなったか、
とっても気になります。

「レペッカ」

三三さんの創作落語は、稼ぎもなくて息子の給食費も払えない
もと役者の父親が、再三の督促を受け、小学校に出向く話。
気を揉むけなげな息子を尻目に、担任の女教師を口説いて
言いくるめようとする、独りよがりでどうしようもない男。
最近はやりのモンスターペアレントの一人と言えそうだが、、
先生のほうが一枚上手だったというオチ。

口説き場面で、唐突に相手を「レベッカ」と呼び、
強引に洋画のようにドラマティックな世界に持っていこうとするが、
それを逆手に取った先生の「レベッカって呼んで」という、
なりきりぶりには大笑い。
はっきり言って、ヒッチコックの「レベッカ」とは
何の関係もないけれど、たいそう面白かった。
三三さん演じるちょっとませた子どもって、大好きです。

「梟山伏(ふくろやまぶし)」

山から帰ってきた弟が何やら様子がおかしく、まともに話も出来ないので、
兄は一緒に山に行った山陽と三三に、その時の様子を尋ねに行くが、
二人ともその時のことは知らない、覚えていないとのことで役に立たず、
山伏に加持祈祷を頼みに行く。
(山陽さんと三三さんが出てくるのは、お話にからませるためだけで、
 ここからが本番)
山伏は弟の様子を仔細に眺め、梟がとり憑いていると見て、
数珠をうちならし、盛んに祈るのだが、かえって兄までおかしくなってゆく。
体をゆらし、奇声をあげ、こちらもとり憑かれてしまった様子。
焦った山伏が祈れば祈るほど、山陽、三三もおかしな様子であらわれ出る。
ついには山伏自身も、皆と同じ身振り手振りになり、
「ホッホー!」と声をそろえて終る。

この演目は初めて見たけれど、笑いながらも不気味な怖さがあって、
なんとも考えさせられた。増幅繁殖してとりこまれてゆくのは、
「茸(くさびら)」にも通じるものがある。
おかしくなった弟が、目もうつろに、病鉢巻のような大きく結んだ
白の鉢巻を頭に巻いているのも、インパクト大。
ここでも山伏役の茂さんの声は素晴らしく、
朗々たる祈りの声にうっとりと堪能。素敵だなあ。
茂山家の若武者三人と一緒だと、他のお二人が舞台の上で
二進も三進も行かなくて往生しているのは、一目瞭然。
対比して、狂言のひとたちの体の凛としたうつくしさに見惚れて、
しみじみ感じ入った一幕。見応えがあった。

会場となった横浜能楽堂も、こじんまりとちょうど良い大きさだったし、
たいへん気持ちよく見ることが出来た。
またいつか、こんな素敵なコラボが見たいなあ。

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