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2008年11月19日02:13

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平成中村座「仮名手本忠臣蔵」Bプロ、Dプロ(後半部分)

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/2008/10/post_25.html

観劇してから一ヶ月もたってしまったけれど、
遅ればせながら、せめてポイントだけでも感想を書いておきたい。

忠臣蔵は人気演目だから、通し上演も結構あるけれど、
結局一番よく見るのは、五段目、六段目、七段目と続く
おかる勘平のドラマティックな悲劇部分。
今回のプログラムでも、発端の大序から四段目を見ることなく、
BプロDプロと、後半ばかりを二度見てしまった。

簡単に言えば、Bプロはベテラン版、Dプロは若手フレッシュ版。
Bプロのほうは最後に討入の十一段目も付くけれど、
私は諸事情のため、七段目までで帰ってしまったので、
結局五段目、六段目、七段目のみを、世代の違う配役で見比べたことになり、
色々興味深かった。主要な役中心に比較してみる。
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【Bプログラム】午後4時45分開演

五段目  山崎街道鉄砲渡しの場
 同   二つ玉の場  
六段目  与市兵衛内勘平腹切の場   
七段目  祗園一力茶屋の場   
十一段目 高家表門討入りの場        
 同   奥庭泉水の場        
 同   炭部屋本懐の場       
引揚げの場  
         
大星由良之助          仁左衛門      
斧定九郎/寺岡平右衛門   橋之助              
おかる             孝太郎      
千崎弥五郎/小林平八郎  勘太郎            
竹森喜多八         七之助             
大星力弥          新 悟             
判人源六          亀 蔵           
不破数右衛門        彌十郎        
早野勘平/服部逸郎    勘三郎
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【Dプログラム】午後5時15分開演

五段目  山崎街道鉄砲渡しの場       
同    二つ玉の場   
六段目  与市兵衛内勘平腹切の場   
七段目  祗園一力茶屋の場
          
大星由良之助        橋之助      
早野勘平/寺岡平右衛門  勘太郎              
おかる            七之助           
一文字屋お才       孝太郎            
千崎弥五郎         亀 蔵             
斧定九郎          彌十郎             
判人源六          勘三郎           
不破数右衛門       仁左衛門
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10月7日  Dプロ観劇 
10月17日  Bプロ観劇

・勘平

やはり私にとっては、若手組の勘太郎くんの勘平が一番印象的。
五段目、六段目の勘平は、昨年の新春浅草歌舞伎でも見たけれど、
きちんと、しかも熱く演じていて、とても良い。
雨でぬれそぼった着物を絞る手つきなど、上手いなあと感心。

回りのひとへの腰の低さ、心のこもった挨拶など、
律儀で真面目なのがよく分かり、だからこそ追い詰められて切腹に至る、
「三十になるやならず」の死の痛々しさにリアリティを感じる。
「色にふけったばっかりに」、お家の大事に居合わせず、転落し、
ついには思い違いの悲劇で自滅する哀れ。泣かずにはおれない。
私の観た日は熱演のあまり、舅の遺骸の前に立てた屏風を倒しそうになったけれど、
姑のおかやさんが内側から支えてくれて事なきを得た。

申し訳ないのだが、お父様の勘三郎さんの勘平には、気持ちが動かなかった。
妙に落ち着いていて、勘平の一杯一杯な必死さが感じられないのだ。
実年齢の問題ではない。去年見た菊五郎さんの勘平には堪能したもの。
台詞がだみ声で、私にとっては耳障りなせいもある。
役者はやっぱり「一声、二顔、三姿」。
声が良くないひとには、どうしても点が辛くなってしまう。

・おかる

七之助くんのおかるは、華奢で西洋人形のようにうつくしくて眼福。
兄弟コンビで、勘太郎くんの勘平とも平右衛門ともよく息はあっているし、
可愛らしくて好きなのだけど、歌舞伎の匂いが薄いような気もする。
玉三郎さんを尊敬し、役を教わっているひとだから、
随所に玉さん写しの言い回しや動きを感じるが、今後も精進して欲しい。
私にとってベストのおかる勘平は、昨年二月の玉三郎・仁左衛門
ゴールデンコンビによるものなのです。

孝太郎さんのおかるは初見だったが、こちらは誠に歌舞伎らしいおかる。
ゆったりして、堂々たる古典的味わい。
張る声がよく響くので、うたいあげる台詞にうっとり。
何の心配もなく楽しめた。お父様ゆずりか、松嶋屋系は良い声が多い気がする。
Dプロでの一文字屋お才は、さすがにまだまだ若い女将という感じがして、
本役はおかるだろうと思う。
        
・大星由良之助       

この役はやっぱり仁左衛門さんのもの。風格が違う。
すらっとした細面なのに、こんなに大きく見えるのは芸の格というものか。
腑抜けた遊び人を装っていても、その品の良さといったらない。
柔らか味があり、その合間にぱっと見せるきびしい顔にしびれる。
このかたの声は大好きだ。聞いていると心地よい。

橋之助さんも、顔の輪郭や姿の良さなどは共通性もあるのだけれど、
残念ながら、声が若干弱いように思う。その分小さくまとまってしまうのだ。
Bプロの定九郎は格好良かった。

・平右衛門

気のいい役で、愛嬌がある。勘太郎くんは良く演っていたし、
本物の兄弟で兄と妹を演じるのは息もぴったりで楽しかったけれど、
由良之助の堕落ぶりに怒り、討とうとする家中の武士を留めて、
座敷から飛び降りるところで、私が観た日には、なんと鬘が落ちかけた!
歌舞伎の本舞台でそんなのを見たのは初めてで、動揺してしまった分、
ちょっと興がそがれた気がする。

橋之助さんも悪くないけれど、おかるの孝太郎さんとの掛け合いは、
若干テンポが違うような気がした。

・小屋のこと

浅草寺の境内に、公演の時期だけに建てられる平成中村座には、
今年初めて足を踏み入れたのだが、
どこからも楽しめるお手頃な大きさで、わくわくした。
休憩中に客席に売りに来る売り子といい、昔の芝居小屋ってこんな感じだったのかな。
舞台正面、お弁当お給仕付きのお大尽席は、お値段(¥35,000!)に
見合っているとは思えない気がしたけれど、最も安い「桜席」は、
舞台の真上脇から見る位置だから、とても珍しい視点。
一度体験してみたいな、と思ったのはこちらのほう。
ちなみに見たのは梅席から。

仮設ゆえの弱点は、外の音がとても響くこと。
たとえば裏の言問通りの車の音。夕方スピーカーからあたりに流れる曲。
夕暮れ時にかあかあと鳴くカラスの声も、筒抜けに聞こえてくる。
Bプロを見た日なぞ、鉄砲で撃たれて、白塗りの足に血をしたたらせ、
空をつかんで悶絶する定九郎の見せ場に、
ぱっちりと表の放送が響き、お気の毒であった。
七段目のあたりで、急に降り出した激しい雨の音が
ざああーっと聞こえて来た日もある。
雨の中の猪猟を描いた五段目だったら、臨場感があったかもしれないけど、
そうそううまくはいかない。

* 公演に直接関係はないけれど、小屋のトイレ通路のほうに、
 勘太郎くん主演の映画「禅 ZEN」のポスターが貼ってあった。
 http://www.zen.sh/
 http://www.kadokawa-pictures.co.jp/official/zen/
 彼は道元禅師を演じているが、特筆すべきは藤原竜也くんも出演していること。
 この二人がからむのって、『組!』の平助と総司以来だろうか。
 来年1月公開だそうだけど、そのツーショットだけでも見たいなあ。

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