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2008年11月07日03:37

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「陽炎の辻2」第八回<雷鳴>(10月25日)

演出:清水一彦

<原作出典>
・おこんの見合い話)
金兵衛が、おこんの亡くなった母親の法事にかこつけて呼び寄せ、
見合いをさせるということを、磐音にこっそり打ち明けるのは、
第十三巻『残花ノ庭』第二章「おそめの危難」一。

磐音がおこんの見合いを由蔵に洩らして驚かれるのは、
第十二巻『探梅ノ家』第五章「白梅屋敷のお姫様」三の最後あたり。

見合いを蹴ったおこんが、橋の上で磐音を責めるのは、
第十三巻『残花ノ庭』第二章「おそめの危難」二の最後。

見合いを蹴られた金兵衛が、がっくりしているのをなぐさめようと、
磐音が宮戸川の蒲焼を約束するのは、
第十三巻『残花ノ庭』第四章「正睦の上府」一。

実際に蒲焼を持っていくのは同巻第五章「カピタン拝謁」三。

・大工)
お佐紀を迎えるため、部屋の造作を作り直す大工が入っているのは
第十三巻『残花ノ庭』第三章「夜半の待伏せ」三。

磐音が小さい頃、大工になるのが夢だったと語るのは、
同巻第四章「正睦の上府」一。

・品川家)
磐音が今津屋からのいただきものである、御頭つきの魚を手にして
品川家を訪れるのは、第十三巻『残花ノ庭』第四章「正睦の上府」三。
(原作では春なので鰆だが、ドラマは夏なので鰹になっている)

幾代が武左衛門を叱責し、柳次郎に「そなたの友選びはちぐはぐです」と
諭すのは、第十一巻『無月ノ橋』第一章「法会の白萩」三。

・正睦の上府)
磐音の父・正睦が上府する際には、佃島に必ず迎えに出向くよう、
藩主実高が言伝るのは、第十三巻『残花ノ庭』第四章「正睦の上府」四。

正睦の上府を聞き、加えて由蔵の推測におこんがうろたえるのは、
同巻第三章「夜半の待伏せ」三。

磐音が、おこんにも同道して欲しいと頼み、二人して佃島に出向くのは、
同巻第四章「正睦の上府」四。

中居半蔵が江戸家老・利高の不正について話すのは、
同巻第五章「カピタン拝謁」二。

場面設定は少し違うけれど、父を迎えに来た磐音を罵倒する利高に対し、
中居半蔵が舌鋒鋭く言い返すのも、同じ章。

おこんの見合い話のあれこれから、磐音が彼女へと一歩踏み出す回。
同時に関前藩の江戸家老・福坂利高の不穏な動きもはっきりしてきて、
磐音の父・正睦の上府は、その両方に大きな意味を持つ。
合間に、いまだお艶を思うおこんの気鬱の様子もさりげなく描き、
品川家では武左衛門を叱り飛ばす幾代さんの雄姿まで見せてくれて、
練り上げられた脚本が、いつもながら素晴らしい。
原作への深い愛、読み込みがなければ出来ない技だ。
最初に比べると、30分という枠を意識させないような充実感。
(もちろん本当はもう少し余裕があって欲しいけれど)

<種々雑感>

・相合傘の二人

見合いから逃げて来て、橋の上に立つおこんの、なんとも寂しげな顔。
降ってきた雨をよけもせず、ぼうっと心をさまよわせるているところへ
やさしくさしかけられる傘。
磐音のほうから傘をさしかけたのは初めて。
いつもさしかけてくれるのは、おこんの方だった。
これまでとは違う二人の関係を象徴するかのよう。

ぱっ、と傘を持つ磐音の手を両手で挟み込むおこんにはっとする。
「私が見合いすることを知ってたそうね」
「なぜ止めてくれなかったの?!」
このストレートな畳みかけは、いかにも彼女らしい。
ぐっと迫るように見つめてくるおこんに対して、
伏目になる磐音の顔の綺麗なこと。

「どうせ私を嫁に行かせたいと思ってたんでしょ」
「そのようなこと、あろうはずもない!」
この言い回しは、ドラマのオリジナル。
原作ではもっと単純に「違う、それは違うぞ」だけれど、
もう少したおやかな感じの山本磐音には、よく似合っていて良かった。

二人のアップが交互に続いた後、画面中央にぱっと見える相合傘の二人。
橋のたもとからのカメラで、バックは綺麗に一面の瓦の波。
印象的な絵だった。

・初めての申し出

このつかの間のふれあいと由蔵の口添えもあって、
磐音は初めて積極的に、おこんを父に引き合わせることを申し出ることが
出来たのかもしれない。
「父上に会っていただきたいのです」と言われた時のおこんの驚きよう。
すぐには返事もできない彼女をフォローするのは、その心をよく知る由蔵さん。
「駄目ですか?」と、じっと見つめられて、その喜びと戸惑いはいかばかり。
「いいんですか?私なんかがご一緒して」というためらいには、
もちろん奈緒に対する申し訳なさもあるだろう。
おこんはそういうひとだもの。
でも「是非そうしていただきたい」と頭を下げられてうるむ瞳には、
抑えきれない嬉しさがあふれていた。

磐音は、おこんへの気持ちをはっきりと打ち出したのですね。
彼女は今現在磐音を支える、大切なひとなのだもの。
よくぞ思い切った、と思うと同時に、やはり奈緒を思うと心中複雑。
でもその痛みとともに、この道を行くしかないのだと思う。

・お月様

あとになってから、磐音の父に会うことをためらうおこんに、
「あの坂崎様がお誘いくださったのですぞ。遠慮はいけません」と
励ます吉右衛門のやさしさ。
「お艶が聞いたらさぞかし喜ぶことでしょう。
最後の最後までお前のことを案じておりましたから」と言いながら、
見上げるのはぽっかりとうかぶ丸い月。
吉右衛門を見送って、おこんも思いを込めて月を見上げる。
あ、そうか。月はお艶さんの象徴なのかもしれない。
やさしく綺麗な、でも手の届かない、遠い夜空に浮ぶ月。

第二回「姉妹」で、鎌倉に行った磐音たちのことを気にしながら
「お月さまぁ…」と月を見上げたり、
第四回「白鶴の宴」の最後で、「お月さまいくつ…」と
月に向かって歌ったりしていたのは、
もう居ないお艶にすがるような気持ちだったのかもしれない、と
今更ながら思った。
大工が入って、お艶の居た頃の匂いが消えてゆくさみしさ。
おこんの気鬱が少しずつすすむ描写は、周到にして繊細。

・父上
佃島の船着場。三年ぶりに会う父は、長旅の無精髯もそのままに、
磐音の姿を認めるや、急ぎ向かってくる。
その足取りがしだいに早くなるところに、父の思いが垣間見えてじーんとする。
ここにかかる「陽炎2」になってからの新しい曲も、
しみじみとしながら、茫洋とした大きさのある音でとても良かった。
磐音を見る目に万感こもり、慈愛に満ちている。
「磐音、そなたは果報者じゃ。おこんさんのような女性と知り合えて」
この台詞には、奈緒との不幸ないきさつがあった磐音への不憫な気持ちが感じられる。
言葉は少なく、朴訥だけれど、表情や佇まいで語る、この父子はやはり似ている。
磐音のほうは心を決めたせいか、終始落ち着いてにこやか。

・おこんの着物

感動的な場面ながら、驚いたのはおこんが普段の着物で出向いていること。
え?どうしたの、おこんちゃん。動転してそのまま駆けつけちゃったの?
普通、思うひとの父上に初めてお目見えするならば、
正装してしかるべき(原作では江戸小紋を着てゆく)。
そういえば、見合いから逃げ帰ってきた時も、これと同じ着物だった。
まがりなりにも亡くなった母親の法事なのだから、いくらなんでもこれはなかろう。
おこんは結構衣裳持ちのはずなのに、今回TPOに関係なく一枚を着通しているのは、
着物好きとしてちょっと解せないところ。

・幾代さま

ドラマではなかなかお姿が見えなくて、いささかさみしかったけれど、
今回はいつもながら貧乏所帯でつつましくやりくりしているところや、
武士としての矜持が足りない武左衛門を、叱り飛ばすところがばーんと出て大喝采!
「武家が金子のことを口にすればいやしくなります」
「あなたは武家の誇りと慎みに欠けておられます。
 坂崎さまを見習いなされ!」
あげく「柳次郎、あなたの友選びはちぐはぐです」
いやずばずばと気持ちよい。叱られて小さくなる武左衛門も可愛い。

冒頭、下ごしらえしていたのはみょうがたけ。
原作では春だから野蒜(のびる)だけれど、いずれも幾代さまが摘んできたもの。
これの味噌和えと、磐音が持参した初鰹で一献、という酒宴は
和気藹々と楽しそうで、見ていて幸せだった。
幾代を演じる高瀬春奈(たかせはるな)さんは、文学座のご出身。
NHK朝ドラ「いちばん星」では体調不良のため途中降板されたことを記憶しているけれど、
かなりグラマラスなかたで、映画「お葬式」(1984)の愛人役は強烈な印象だった。
年を重ねられると、またイメージが違うものですね。
http://talent.yahoo.co.jp/talent/16/w93-1669.html?frtlnt=dir

・磐音もろ肌脱ぎ

地蔵湯二階で、もろ肌脱ぎでうちわを使っている磐音。
これはなんだか気恥ずかしかった。あらわな白い肌。目のやり場に困る。
完全にファンサービスのカットだと思われるけれど、
必然性はまったくないですね(笑)
それにまったく動じないおしまさんは、さすが湯屋の女将。
竹蔵親分と二人して「これ!」と親指をたてるのは可笑しかった。

・にぎやか金兵衛長屋

長屋の女性陣は、いつだって井戸端にいるのですね。
洗い物したり水汲んだり、本当ににぎやか。
前回は朝方の鳩の声などがしていたけれど、
今回は竹村家の赤ん坊も盛んに泣くし、
おこんに見合いを蹴られてがっくりしている金兵衛さんの背景では、
しきりに猫の鳴く声が聞こえる。
どこかに住み着いているんでしょうか。
金兵衛さんの台詞は万事芝居がかってて、笑わずにはいられない。
「なーんもありまの水天宮」とか、
「とくと仕上げをご覧じろ!」と見得を切って
長屋のはつねに「何がごろうじろなんだい?」と突っ込まれると、
「まあ何だ、五郎と次郎というのがいてね、その間に三郎と四郎が…」
なんていう意味のなさ。
おこんにふられてしょんぼりしているのは、可哀相だけど可愛らしい。

・尾口再登場

夜道でずいっとあらわれる存在感はやはりすごい。
手甲で隠した手首が不気味。
このひとは、まったくブレないという印象。
短い時間でも、強烈なインパクトを残す。悪役とはこうでなくては。
関前藩のいざこざは、次回が大詰め。

<ゲスト俳優>
・若狭屋番頭義三郎はまいど豊(ゆたか)さん。
http://www.vaudeville-show.com/office/maido/profile.html
『新選組!』での、奇妙な笑い方をする谷三十郎の印象が強いので、
最初に顔を見たときはびっくりしてしまったけれど、
こちらでは腰の低い、おだやかな番頭さんになりきっていた。
劇団東京ヴォードヴィルショーのご出身。良いお声ですね。

・少年時代の磐音役は、谷村拓哉(たにむら たくや)くん。
http://news.goo.ne.jp/entertainment/talent/M07-0437.html
目がくりっと大きいところが、磐音らしいです。
あ、クドカン作品の昼ドラ『吾輩は主婦である』にも出てたんだ。
あれは本当に楽しいドラマでした。
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