＜参加するまで＞
WOWOWで4月から始まる『パンドラ』という連続ドラマに、
山本耕史くんが出演するということは、
1月11日付でファンクラブのHPにお知らせが出ていた。
http://www.wowow.co.jp/dramaw/
内容について詳しいことはまだ分からないけれど、
「医療関係のサスペンス」だということ。
配役を見ると三上博史、柳葉敏郎、小西真奈美、國村隼、
小野武彦、平田満などの、実力派キャスト揃いだし、
脚本は『マチベン』「白い巨塔』『14才の母』などの井上由美子さん。
骨太でかなり見応えのあるものではないかと期待。
そんなところへ、耕史ファンのマイミクさんから、
このドラマのエキストラ募集のお知らせ。
http://www.kyodo-tv.co.jp/ja/drama/drama_pan.html
これに参加すれば、彼の役柄が多少なりとも分かるだろうし、
滅多に無い機会だけに、半日休みを取って応募。
ただし気になったのは「フォーマルウェア」着用の件。
最近とんと着る機会もなくて着慣れてないうえに、
フォーマルといえども状況設定によって、TPOがある。
どんな設定のもとに着るフォーマルなのか問い合わせたところ、
>今回の設定は大学病院の「新外科センター起工パーティー」になりますので、
>皆様の役柄はそこに招待された医療関係者、及び学会関係者です。
>従ってやや「式典よりの」パーティ、とイメージして頂くとよいかもしれません。
>具体的には、和服やドレスでなければ、スーツでなくても結構です。
>色味はむしろ明るいものの方が望ましいです。
というお返事をいただき、当初考えていた喪服にも使う黒ではなく、
ずいぶん古いものだけれど、淡いパステルカラーのスーツにした。
ヒールではなく平底の靴にはしたものの、薄手のストッキングつけるのも久々。
やっぱりスーツって窮屈だなあ。
普段いかにラクをしてるか、思い知らされる。
＜集合＞
集合は9時半。府中市にあるセミナーハウス前。
到着したら、顔見知りのファンのひとたちも数人いた。
磐音のワープステーション撮影見学でも顔を合わせていたような面々なので、
ひとしきりおしゃべりで盛り上がる。
9時40分過ぎに中に移動。
地下階の階段下で、本日の撮影の流れのざっとした説明を受ける。
これから撮る場面は、大学病院の新センター起工パーティーだということ。
國村隼＠大田黒教授が壇上で挨拶のスピーチをするので、
皆であたたかく拍手をしてあげて欲しいということ。
その後小野武彦＠深見厚生大臣が乾杯の音頭をとるので、
グラスを上げて乾杯して、あとは各自歓談を、ということ。
ただし役者さんたちの台詞を集中的に拾わねばならないので、
基本的にしゃべりは口パクで、音を立てないこと。Be Silent!
わずかな空き時間にお手洗いで身支度を整え、奥のホールへ移動。
＜ホールの様子＞
壇上には「港東大学新外科センター起工パーティ」というような
文字が投影されたスクリーン。両脇などに大きく花が盛られている。
ホール内に丸テーブルがいくつかあり、
入り口近くの長テーブル上には銀の盆やお皿。
その中にはサンドウィッチ、フルーツ、デザートのチョコケーキなどの食べ物。
いかにも式典パーティの雰囲気。
そうやたらに広くはないが天井は高く、ライトが多いので、少々暑く感じる。
（撮影に入ると、さまざまな手持ちライトも加わり、暑さはMAX！）
前方高みの両脇には電光掲示。向かって右が時間表示。すでに10時を少し回っている。
左は休憩表示。しかしそれが0以外に表示されることは最後までなかった。
後ろには「港東大学病院のあゆみ」と題した
写真パネルが年代ごとに飾ってあり、
大正時代の古めかしい建物と白衣の看護婦たち、
昭和35年の水辺の本館、昭和38年の実習風景などと、
架空の大学の歴史が肉付けされている。
古めかしさは本物だから、それぞれどこからか借用したものと思われる。
ほんとはどこのものだか気になるな。
そもそも港東大学って、場所はどこの設定なんだろうなあ。
関西ではなさそうだし、横浜あたりも可能性はあるのだろうか。
皆、丸テーブルの周りに、あまり隙間があかないようにばらけて待機。
＜役者さんたち＞
特に合図もなく、役者さんたちはさりげなく会場に登場していた。
大田黒教授役の國村隼さんも、壇上近くにいらっしゃる。
NHK朝ドラ『芋たこなんきん』でのカモカのおっちゃんの役が
まだ記憶に新しい。このかたは味があって好きです。
と、油断していたら、食べ物を載せた長テーブルの向こうに、
いつの間にかダークスーツに身を包んだ耕史くんが現れている。
そしてテーブルまわりにやってきた。至近距離！
首から大きなフラッシュ付きのカメラを提げている。
このパーティ取材の記者かなにかの役だろうか。
眉根を寄せて、気遣わしげな表情。笑みはまったくなし。
かかとを支点に、爪先をあげたり、手首をまわしたり、プチ・ストレッチ。
かと思えば、うしろに飾ってある写真パネルをしげしげと見たりする。
あとでもっと近くで見る機会があったが、
衣装は細いピンストライプが入った濃紺のスーツに茶の革靴。
いつもながら驚異的に長い足。すらりと綺麗な立ち姿。
ワイシャツは白だけど、よく見ると薄い黄色の縞入り。
ネクタイはシルバーに細い紺色の斜め縞。
髪は黒く、短め。 とてもきりっとした印象。
その後、他にもカメラをさげた記者役のひとたちが、
何人かあちこちに撒かれる。フラッシュ連写の練習なども行われる。
壇上では演台前で國村＠大田黒教授が、
「この新センターは、がん治療のための外科手術に主眼をおいたもので、
念願かなってやっと起工の運びと成りました」というようなスピーチを
繰り返し練習。
「ではご尽力いただいた深見厚生大臣にお言葉をいただきます」という台詞で、
ホール上手奥のほうから、小野武彦＠深見厚生大臣登場。
壇上にのぼり、がっちりと二人握手をかわし、大臣祝辞に入る。
耕史くんは演出の方から、「では大臣に〜」のところで、もう少し前に
動いてください、と指示を受け、後ろのテーブルわきの位置から
すっと回り込んで前方に移動していた。台詞のたび同じ動きを繰り返す。
隅のほうにいるジャンバー姿の山本圭＠緑川（元？）教授と
目線を合わす芝居があったようだ。
圭さんと耕史くんはNHKドラマ『マチベン』以来かな。
すらりとしたスレンダーな女性が入ってきた。小西真奈美さん。
サエコさんと呼ばれてたようだったのは役名か。本当に小顔で素敵。
野田MAPでの舞台をみたことがあるけれど、板の上ではいささか小さすぎて、
他の役者さんとの釣り合いがとれないくらいだった。
遠近感が狂ってしまうほど顔の大きさが違うのだ。
綺麗なブルーの袖なしワンピースに下は黒のパンツ。
真珠のロングネックレス。若々しく、かつシックなスタイル。
パーティ客の一員として、前方のテーブル周りへ。
肌の露出が多いので、合間にはショールをはおったり、ダウンコートを
着たりと大変そう。彼女とも耕史くんは目を合わせていたのだと思う。
とにかく、この場面では彼の台詞はなくて、ひたすら目の演技だった。
壇上の下手で誰か足を長く伸ばしてストレッチ運動してると思ったら、
なんと相島一之さん！こちらもスーツ姿。何の役なのかなあ、と
見ていると、小野＠厚生大臣を囲む一団の中にいらした。
大臣付きの秘書官とでもいった感じだろうか。
それにしても、このお二人は大河『新選組！』での新見錦と小島鹿之助なのだ。
組！的にはありえないツーショットだけれど、
顔見知りの耕史ファンたちは、ほとんど熱心な組！ファンでもあるので、
それだけでテンションがあがってしまう。
相島さんの出演は知らなかったし、得した気分。
その後撮影が終ってひっこむ時、あきらかにそわついている私たちにむかって
ぱっ、と顔を向け、にひゃ〜っという擬音をつけたくなるような
相島スマイルをサービスしてくださった。良い人！
＜繰り返し繰り返し＞
テストの次本番。カットがかかってモニターチェックがOKなら次へ。
しかし撮影現場をみるたびにつくづく思うけれど、
多分画面上ではわずかな時間のカットでも、実際の撮影には本当に
繰り返し巻き返し、同じ場面を撮る。ロングで撮り、アップで寄り、
イントレなど使ってあおったり、上から俯瞰で撮ったり。
それらの映像をつなぎ合わせて作ってゆくものだとは理解しているが、
そのつど同じシチュエーションで同じ台詞、同じ動きを繰り返す
役者さんは生身だから大変。
國村さんはさっきから、繰り返し同じスピーチをなさっていて、
かえってなめらかに回らなくなるところがあり、
時に滞って「ごめんなさい」と手を上げる。
小野＠厚生大臣も、「医療技術の発展は、一に人材、二に施設」
というべきところを（あんまり何度も聞いたので、こちらも覚えてしまう）、
「一に施設」と言い間違えてしまった。
そのあとのごまかし方が可愛く（「二に人材。…三にも施設！」の駄目押し！）、
一同笑い。
招待客役のエキストラも、同じように拍手し、同じようにグラスを
持ち上げ、同じように置いてまた拍手。
同じことを繰り返しながら時刻だけは進み、もう数時間立ちっぱなしで、
ちょっとヒールを脱いで足をやすめたり、しゃがみこんだりのひとも出始めた。
グラスのなかの飲み物はどんどん気が抜けてゆき、
ラップをはがされた後、空気にさらされ続けのサンドウィッチなどは、
おそらくぱさぱさになっているだろう。
ただ、これはパーティ会場らしい「見世物」に過ぎないようで、
私たちに許されているのは乾杯だけである。
もはや昼過ぎ、あちこちでお腹空いたね、の声。
しかし役者さんたちだってスタッフだって、それは同じだろう。
時間が経過すれば汗もかくし、疲れも多少顔に出る。
メイクさんや小道具さんがぱぱっと寄っていって、メイク直し。
耕史くんのそばにも、二人の女性スタッフが駆け寄り、
彼はなめらかな仕草で腕時計をはずし、小道具さんに渡した。
どうするのかと思ったら、彼女は時計の針を動かしていた。時刻の修正か。
メイクさんは彼の前髪をあげて、パフで軽く皮膚をおさえたり、少し塗り足したり。
あの、アンドロイドみたいに染みひとつないすべすべの肌に触れて、
緊張しないのかな、とついファン目線で見てしまうけれど、そこはプロですものね。
壇上でも國村＠教授がメイク直しされている。
乾杯前後のシーンは一番長く、これ以外はやらないのかしらと
思ってしまったくらいだが、ようやくそこは終ったらしく、
柱付近で、國村＠大田黒教授と、山本圭＠緑川（元教授？）が、
歩み寄り、ちょっと緊迫したひそひそ声でやりとりしているカットも撮っていた。
この二人の関係には、いろんなドラマがありそう。
少し離れているので、台詞までは聞き取れなかったけれど、
やはり渋くて深みのある声だなあと感心。響きが重低音で伝わってくる。
このカットは、他のひとは直接関係はないのでちょっと手持ち無沙汰。
耕史くんの姿が見えないと思ったら、柱の陰の見えないあたりの
椅子に座って待機中。となりにダウンコートを羽織った小西さんも座り、
二人でなにか楽しげに話していた。
＜群集歓談場面＞
13時終了予定のはずだったが、時間はかなり押している。
今度は再び、さきほどの乾杯のあと、パーティ客がグラスを片手に
テーブル周りを周遊しながら歓談する場面。
皆が一斉に動くのだが、
「靴音が結構気になるので、下は写しませんから靴を脱いでください」
と言われて脱いでやってみたり、
「じゃあ履いて良いですから、音をたてないように気をつけて歩いてください」
と言われたり。
前のほうのテーブル付近のひとたちには、結構細かい指導が
入っていたけれど、私と友人たちは「後ろ側だから多分映らないよね」
と言っていたら、突然「ここからここまでの方、こちらにお願いします」
と上手前方へ移され、立ち位置まで決められた。
カメラのフレームをのぞきながら、もっとこっち、と
「ばみり」（位置決めテープ）まで貼られる。
歓談してるはずなのに、通常の感覚だと不自然な距離だが、
きっとフレームを通しての重なり具合だと、ちょうど良いのだろう。
歩いていって、ほかのひとたちと合流し、後ろ側のパネルを見に行くという
動きをつけられたので、動く背景として登場するのかもしれない。
撮ったカットがすべて使われるわけではないと思いつつ、ちょっとわくわく。
耕史くんはわりと前寄りのテーブル付近にいたので、近々とよく見えた。
服装の細かいところまでチェックできたのはこの時。
眉をひそめている表情は変らない。
何かを追及して暴いてゆくような、気を張り詰めた役なのかなと思う。
台詞は最後まで一言も発しなかったし、
名前で呼びかけられたりもしなかったので、役名は分からず仕舞。
でも真摯な雰囲気はじゅうぶん感じられたし、
本当に間近に行き来できただけで満足。
ドラマの肌合いもなんとなく想像出来て、ますます期待が高まった。
結局20分遅れの13時20分にこのパーティ場面はアップ。
記念に『パンドラ』の文字入りのオリジナルノートをいただいて解散。
やっぱり撮影現場って興味深い。映像や芝居の側に居られる機会があれば、
出来るだけ逃したくないと思う。
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