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2007年12月27日02:46

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三三・吉弥ふたり会 (「道具屋」「天災」「蛸芝居」 「薮入り」)

内幸町ホールにて、クリスマスの日の落語会。
朝ドラ『ちりとてちん』は絶好調だし、
吉弥さんのブログへのコメントもうなぎのぼりだし、
ホールには当日券を求めての行列が出来ていた。
補助席が終ったあとは、立見の方も入ったけれど、
それでも入りきれないひともいたらしい。
しばらく吉弥さんの予約はよっぽど気合入れないと。

前座: 桂佐ん吉「手水廻し」 
三三: 「道具屋」 
吉弥: 「天災」 
   −中入り−
吉弥: 「蛸芝居」 
三三: 「薮入り」 

「手水廻し」
大阪からやってきた客に「手水(ちょうず)を廻してくれ」と言われ、
その意味するところ(洗顔のための水)が分からず、
とんでもない見当違いで客を怒らせてしまった田舎宿の主人たちが、
それが何なのか知るために、わざわざ大阪の宿へ出向く。
朝になって「手水」を頼んだまでは良いが、それをどう使うのか分からず、
またも大間違いの展開に…というてんやわんやの噺。
素直に、それがいったいどういうものか聞けばよいものを、
どんどん間違った方向に行ってしまう宿のひとたちの右往左往ぶりは抱腹絶倒。
私なんかは「ちょうず」という言葉になじみがあるからこそ、
その分からなさぶりが可笑しいのだけど、こういう滑稽な食い違いって
いつの世でもあるのだろうなあ。
佐ん吉さんはお初。声も身振りも大きくて、にぎやかに面白かった。

「道具屋」 
この噺は以前吉弥さんでも他のひとでも聞いた。
やはりやるひとごとに、味わいは違うものだ。
まあ上方と江戸では、店を出す場所からもう違っているし、
ネタになる道具も若干違っているようだ。
気の利かない与太郎が、伯父に言われた通りの場所にむしろを敷き、
古道具の商いを始めるけれど、とんちんかんなやりとりばかりで、
一向に上手くいかない。
三三さん、まくしたてるべらんめえ口調は巻き舌で、いかにも江戸っ子。
ちょっと皮肉のきいた飄々とクールな持ち味がたまらない。
マクラの着物の話がおかしくって笑いっぱなし。
両国の奥さんたちのひそひそ話の顔の表情ったら!
たしかに三三さんはひょろりと長身ですけれど、
渋くて素敵な着物姿ですよ。

「天災」
お待ちかねの吉弥さん、クリスマスに合わせ、真っ赤な着物と羽織でご登場。
ちなみに座布団も赤です。福々しいサンタさんのよう。
短気な男がご隠居さんの紹介で心学の先生のところへ行かされ、
天とは喧嘩出来ないから、何事も天から降ってきた災いだと思うようにすれば
あきらめがつき、腹も立たないと諭され、その気になって帰ってきたものの、
うろ覚えのその講釈を隣で披露するうち言っていることが支離滅裂になる。
落語に出てくる愚か者たちって、どうしてこう聞いた話の枝葉にはこだわるくせに、
肝心なところがガタガタなんでしょうね。
吉弥さん、まくしたてる男と心学の先生との口調のメリハリがすごい。
一気呵成なスピードと悠揚迫らざる落ち着きと。
まばたきひとつしない瞠った瞳にひきこまれそうになります。

「蛸芝居」
中入りをはさんでふたたび吉弥さん。今度は羽織なしに黒いお着物。
主人を始め丁稚にいたるまで芝居好きの店に買われた蛸まで芝居好きで、
逃げようとして芝居もどきの大立ち回りを演ずるという「蛸芝居」。
吉弥さんお得意の一番。
「七段目」にしてもこれにしても、すっかり役者気分で声音を遣い、
夢中で芝居ごっこに興じる芝居狂たちの可愛らしいこと。
歌舞伎好きとしては、微笑ましくて微笑ましくて、顔がゆるんでしまう。
吉弥さん、お芝居がらみのお噺がほんとに上手いなあ!
立ち上がるわけではなく、膝立ちだけれど、見得を切ったりする
キメの所作がぴしっときまって、惚れ惚れ。
三味線と唄にのって生き生きと演じられるはめものの醍醐味。
一丁前に見得を切る蛸の顔芸がまた絶妙!
ちょうどこの日の『ちりとてちん』の放映の一門会で、
吉弥さん演じる草原兄さんがこの演目を見せたばかりだし、お客さん大喜び。
TVでは蛸のお目見えどまりだったところを、まるまるたっぷり見せて
もらえたのだからありがたさ倍増。嬉しいクリスマスプレゼント。

「薮入り」
泣いた泣いた。こういうけなげな子、親子の情愛って
ほんとにやられてしまう。
奉公に出して、三年ぶりに初めて帰ってくるわが子を待つ
夫婦のそわそわわくわくする気持ち。
帰ってきたらあれも食べさせてやろう、これも食べさせてやろう、
いろんなとこ連れてってやろう、と気持ちだけ先走って
言ってることが支離滅裂になってゆく父親の、
愚直なまでにほとばしる感情に胸がいっぱいになっちゃう。
そしてまた、帰ってきた子は飛びついてくるかと思えば、
手をついてきちんとおとなびた挨拶。
嬉しいやら面映いやら、泣き笑いの一幕があって、
まずは湯に、と送り出してから、財布に大金が入っていることを知り、
よからぬことでもしたかという疑いが理由を知って消えるまで、
この人情劇に浸りきって涙を流した。
我慢辛抱が大切だとか、お互いがお互いを思いやるこころだとか、
殺伐としたニュースばかり流れる今見ると、なんてうつくしいことか。
皆々いとおしくて泣けてくる。三三さん、女性も良いですねえ。

中入り時、お二人からのクリスマスプレゼントということで、ロビーの
机にお菓子が置いてありました。キットカットみたいなチョコとか
源氏パイとか、ちょこっと食べられる袋菓子。
うれしくいただきましたが、お二人のお噺はなによりのご馳走。
おなかいっぱい。ありがとうございました。
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