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2007年09月13日00:53

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22才の別れ

9月1日、テアトル新宿にて鑑賞。
http://www.22saino-wakare.com/

大林宣彦監督の「大分三部作(サーガ)」第二弾。
前作『なごり雪』(2002)と同じく、
懐かしの青春時代の舞台は大分県臼杵市周辺(今回は津久見)。
大ヒットしたフォークソングを基とし、
歌詞の情景をそのまま映像化したような絵が臆面もなく入るのも共通している。

古い町並み、自転車で越えてゆく陸橋、お墓参りなど、
過去の大林映画、尾道シリーズにも通じる景色満載なのだけれど、
いまひとつ乗り切れなかった。
ヒロインの自転車のチェーンが外れて困っているのを、少年が助けるなど、
なつかしの『さびしんぼう』と同じ情景まで出てくるのに、
それが心に染みてこない。
一面の彼岸花も静かな竹宵の灯も、
本来好きな世界なのに、記号にしか思えなかった。
元々大林さんの作品は隅から隅まで作りこんであるのだが、
彼岸花の作り物加減は、映画というよりもお芝居の舞台装置みたい。
完全な虚構。

同じ近作でも、少年少女だけの『転校生』リメイクには感動したのだけれど、
現代との合わせ鏡で相対的なつくりのせいなのか。
どこか感情移入を拒まれているような気がする。
まさに、私の世代の物語だというのに。
どうも大分シリーズとの相性は今ひとつ。

それでも、心に残ったこともある。
売れ残りのケーキを安く買ってきて、一緒に彼女の誕生日を祝って、
22本のロウソクを立て、17本目からは一緒に火をつける場面なんて、
歌詞そのまま過ぎて、どうしようかと思ってしまったが、
この年代の、ちょっと愚直なまでの切ない情景には、
村上春樹さんの『ノルウェイの森』の直子との場面をも連想した。

私的に一番印象的だった風景は、昔の俊郎の実家の、
窓からそのまま鄙びた電車のホームが見える部屋。良いなあ。

それにしても、大林映画のヒロインたちは、
いつも同じような顔かたちで立ち現れるものだ。
年代を超えた理想の少女たちのリレーのよう。
北島葉子役の中村美玲も、その娘の田口花鈴役の鈴木聖奈も、
新人とは言いながら、まるでずっと前から知っていたような、
どこかで逢ったような気持ちになる。
筧利夫さん演じる俊郎の、青年時代を演じる寺尾由布樹という子は、
細面でなかなかきりっとした顔立ちだなあと思ったら、
もと関脇の寺尾関の息子さんとのことで驚いた。
あの美男力士がお父様なら、と納得。

<植物メモ>
副題は「Lycoris 葉見ず花見ず物語」で、
子どもが作れない利夫のからだが、
結実しない彼岸花のイメージに重ねられている。
彼岸花は見るたびにはっとしてしまう印象的な花で、
死人花だの地獄花だの物騒な別名も多いけれど、こころひかれる。
曼珠沙華(まんじゅしゃげ)という名前も奥深くて好き。
白秋の詩を思い出す。

綺麗なピンク色の夏水仙だとか、キツネノカミソリなども
このリコリス種の仲間。
葉っぱの時期と花の時期が、まったく重ならない習性も同じ。
「葉見ず花見ず」とも「親知らず子知らず」ともいう。
なお、リコリス(licorice,liquorice)菓子と言われるものは、
このヒガンバナとは関係なく、マメ科の甘草が原料となっている。
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