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2007年05月16日23:19

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「居眠り磐音江戸双紙」ロケ見学・その弐(5月13日)

前日のロケ見学はほとんど立ち詰めだっため、
さすがに少し足に来ていた。
ゆっくり朝寝して、お洗濯して干して、のんびり休日モード。
さて、と一息ついて携帯を開いてみたら、Kさんからのメール。
「今日も12時から2時間位撮影あるらしい」とある。
え!(驚愕)
昨日は、ここでの撮影はもう5月中はないと聞いていたのに。
彼女も今日になって他の知り合いから情報をいただいたそうだが、
お母様と一緒に日野新選組まつりに向かってる電車の中だったので涙を呑んで断念。
でも一応まめに、こちらへも情報を回してくれるところがいかにもKさんらしい。

一瞬かたまってしまったのは、なにしろロケ地まで時間がかかるから。
せっかく10時にメールをくれていたのに気付かず、既に11時過ぎ…。
うちから1時間半はかかるので、12時に間に合うわけはなし、おそらく到着は1時頃。
2時までの撮影のうち、どの程度姿を見られるものか何の保障もない。

しかし次の瞬間、怒涛のように身支度をすませて飛び出した。
行動力が私の身上。行かずに後悔するより、行って後悔したほうが良い。
駅中を走りに走って秋葉原発12時15分の区間快速に間に合い
(飛び込んだとたんにドアが閉まった)、みらい平駅には12時55分に着き、
タクシーを飛ばし、ワープステーションに駆けつけたのが1時5分。
飛び込んだら、なんとちょうど黒の着流し姿の磐音さまが現れた!

噂には聞いていたが、なんという色っぽさ!
目は釘付けになり、動悸はいやおうなしに高まる。
原作の磐音は、本当に食うや食わずの貧乏で、
それでもそれをあまり気にせず、
真面目すぎるがゆえの会話のズレに、
お育ちのよさからくる天然ボケも入ってなんとも憎めない。
春風駘蕩たる風情ながら滅法腕の立つ、品格のある浪人なのだが、
目の前のこのひとは…

黒の着流しに黒の帯(もちろん浪人結び=片ばさみ)。
着物裏は鮮やかな赤。裾まわり、袖口、襟元にもすべてその色がのぞく。
足元は素足に草履。鼻緒は黒。腰の大小も黒。下げ緒が赤。
長い髪は高めのポニーテール形にくくられ、その元結の色も赤。
どこをみても黒一色に挿し色の赤が際立ったアクセント。
芸者さんの正装のような、凛と色気のある姿。

原作とは違うキャラクター造形だということがはっきり分かる。
これのどこが米櫃に明日の米もない、かつかつの暮らしのひとなんだろう。
いや、どこからどう見ても美々しい伊達者。
こんな舞台衣装のような格好でうなぎ割きのアルバイトをするのだろうか?
色合いと印象の強さから連想するのは歌舞伎の「助六」。
または田村正和の妖艶な「乾いて候」など。
頭を動かすたびに長いポニーテールが揺れ、
頬のあたりには少しシャドーが入っていたようだった。
とにかくため息が出るほどうつくしい。

もはや昨日で顔なじみになった親切なスタッフの方が、
「今からのは橋の近くに行った方がよく見えるよ」と教えてくださり、
ファン数人は平行した一本裏の道をだだっと走って、太鼓橋ちかくの水辺へ移動した。
確かに着流し磐音さまは、じきにこちらへやってきて、
太鼓橋向こう側の口入屋近くに待機し、二人連れで会話しながら橋を渡り始めた。
今日の連れは半纏と襟巻きをしてるところを見ると、長屋の大家・金兵衛さん。
「うなぎ割きの仕事はもう慣れたかい?
ところで坂崎さんはどこでヤットウを覚えなすったんだね」
などと磐音に語りかけながら歩いてゆく。
演ずるは小松政夫さん。飄々とした味わい。

橋の近くの柳が揺れる。
枝も暖簾も、自然の風に吹かれているのは気持ちのよい景色だ。
橋までは存外近く、渡る二人の姿や表情もくっきりとよく見えるが、
そこを過ぎるとこちらからは大店の建物陰に隠れてしまって見えなくなる。
まるで一幕見席からの花道のように、声ばかりして姿は見えず。
さっきの場所とどちらがよいものか逡巡しているうちに、
何テイクか撮ってこの場面は終了。

回りにいる耕史くんファンらしき人たちに聞いてみると、
彼の現場入りは12時半頃で、磐音の扮装で現れたのはこの時が最初とか。
私は幸運にも間に合ったんだ。あきらめなくて良かった!Kさんありがとう。
心残りだったこの黒の着流し姿を見られただけでも来た甲斐があったというもの。

これで撮影は終わりかと思いきや(当初は確かにその予定だったらしいが)、
次の磐音さまの撮影は午後4時とのことで、結局ずっと待機。
昨日より日差しが少ない分、涼しい風に体が冷えてゆく。
急いだとはいえもう少し着てくればよかった。
おまけにどうせ2時で終るから、と気のせくまま食料もなしに来てしまったが、
ここの売店にはお弁当になりそうなものが何もない。パンも売り切れたあと。
仕方なく、いただいたチョコレートだのポン菓子だの野菜チップなどで
おなかをごまかしながら待つ。

その間も乾いた地面は砂埃をたてる。
故・杉浦日向子さんの『江戸アルキ帖』を見ると、
江戸で床屋と湯屋が発達したのは、町があまりにほこりっぽかったためらしい。
「ことに夏場の汗まみれのところに、ひとつ風吹けば、
人間キナコモチの一丁あがりとなる。
一風呂あびて、髪を結い直したくなるのは、切実な要求なのだ」という、
そのほこりっぽさを実感するような場所。
なにしろ舗装などされていない、土そのままの場所なのだ。
全身あちこちざらついてゆく。

撮影は続行しているが、磐音抜きの場面が続いた。
金兵衛さんや他の数人の男たちが揃いの藍色の法被
(波頭が白抜きで描かれたちょっと威勢のよい柄)を着て
立っていたのは何の場面だったのだろう。

途中、奉行所役人姿の佐藤B作さんが出てきた。
思わず「永井さま!」と声をかけたくなるが、おそらく笹塚さまの役と思われる。
そのうち、坊主頭で尻端折の下に股引姿の高橋克実さんが出てきた。
こちらは何の役かまだ見当がつかない(追記・あとで地蔵の親分と判明)。

箱を担いだ男が店の外に押し出されたり、怒声が店内から聞こえたり、
合間にセットを直したりする大工道具の音がして、
カットは着々と進んでいるようだが磐音さまはなかなか出てこない。
もはやあきらめかけた4時45分頃、
仕事の相方・品川柳次郎らしき若者(藍色の着物に袴姿)と連れ立って
セクシー浪人は姿を見せた。
遅れてここに到着し、登場を待ちかねていたファンのひとたちが
左右から彼にファンレターを差し出すと、
左右の手でそれを受け取るしぐさが実に鷹揚にきまっていて、
花魁たちの吸いつけ煙草をいっぱいもらう助六の
「煙管(きせる)の雨が降るようだ」というのを思い出してしまった。

ここで時間切れ。彼の撮影はまだ開始されず、
近くに用意された椅子に座って出を待つ磐音さまは、
出てゆくファンたちにちらりと目を走らせ、軽く目礼した。
思わず手を振る私たち。ぽーっとなって出る。

今日も初対面ながら、ファン同士の会話がはずんだ方は、
宇都宮から車で来たというのでまた守谷駅まで乗せていただく。
毎日ひとの情けにあずかって感謝するしかない。
遠くて時間と交通費がかさむのはいささか痛いが、
どんどんこの場所に愛着が湧いてくる。

それにしてもここの地名が、合併によって
「つくばみらい市」となってしまったのはいただけない。
前の通り「筑波郡伊奈町」となっていたら、
『新選組!』のロケ協力地としてしょっちゅう出た地名だとすぐ分かるのに。
地名というのは歴史そのものなのだから、安易に変えてしまう
(しかもひらがな名)のは、愚の骨頂だと思う。
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