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2007年01月28日11:27

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新春浅草歌舞伎・夜の部(「渡海屋」「大物浦」「身替座禅」)

1月20日(土曜日)当日券にて第二部(夜の部)観劇。
本日のお年玉・日替わりご挨拶は愛之助さん。
先日の獅童さんは紋付袴に素面だったけれど、
愛之助さんはきちんと顔をつくった裃姿で、愛嬌たっぷり。
お友達情報で知ったのだが、作家の柴田よしきさんのブログには
その二日前の18日夜の部を見に行ったことが書かれていて、
その日の愛之助さん挨拶の時には、客席に三谷幸喜さんがいたという。
愛之助さんが客席に下りてマイクを向けたので、場内が沸いたとか。
微笑ましい情景。見たかったなあ。

「義経千本桜」は「渡海屋」と「大物浦」。
ぐっと時代がかった世界。実ハ何何、という二重構造も入り組んでいる。
個人的好みから言えば、こういう演目はまだ若手だと厚みが出ない感じ。
ベテラン勢でじっくりと腹芸を見せてもらいたい。
そんななかで勘太郎くんは非常にお行儀よく、品のある義経でさすが。
七之助くんは銀平女房・お柳の女房ぶりがまだ硬い感じがする。
比べれば「大物浦」での、身分をあきらかにした典侍の局のほうが
ニンに合っているようだった。長い下げ髪と十二単がよく似合う。

史実とはちょっと違う設定だけれど、
幼い安徳帝と、波に沈むうつくしい局たちの悲劇というのは、
平家物語でも特に有名な段ですっかり刷り込まれているだけに、
一同の嘆きを聞くだけで涙腺が刺激される。
台詞も憂いが効いていてよかった。
それにしても小さいとはいいながら、
安徳帝をずっと抱き上げているのはずいぶん骨が折れるでしょうね。
華奢なひとだけに見ててはらはらする。
帝はそのあとの場面でも義経方の家来にずっと抱きかかえられているけれど、
お人形さんのように身動きもせずおとなしくしてる方も大変でしょう。

渡海屋銀平実ハ新中納言知盛という大役は獅童さん。
背が高くて柄は大きいのだが、役としての大きさはもうひとつ。
彼に関してはちょっと点が辛くなるのだが、
歌舞伎の匂いが足りないような気が。なんとなく腰高な感じ。
もっとぐっと重心を低く、地に足がついた感じでやってもらいたい。
彼を見ていると良くも悪くも劇画調だなと思ってしまう。
化粧の仕方もあるのかしら。

さて、これが一番のお目当てだった「身替座禅」。
愛之助さんの奥方玉の井、期待通り!
正な顔立ちのひとなのに、わざわざきれいに見えないようにした顔づくり。
大げさに崩したわけでもないのに、
ちょっとたれ目ぎみ、おちょぼ口でのっぺりした感じ。
でも微笑んでる時は可愛くも見える。
そうそう、こんな表情の老婦人っていますね。

比べれば獅童さんの奥方は若い感じ、愛之助さんは年嵩の奥方ふう。
そして獅童玉の井が全編誇張されたコミック調なのに対し、
愛之助玉の井は愛嬌たっぷりで、醜女の深情けのおかしみ。
実に女、ですねえ。やわらかい。獅童さんは終始一貫して男だったから
最初から最後まで笑われてたけど、こちらはかわゆい。

勘太郎くんは本日も絶好調。絶妙の間合いがいいです。
座禅の衾の中身が奥方だと初めて分かって凍りつき、
顔は正面向けて目をあわさないまま、
しゅるーっと逃げ始める足の動きの面白さ。

それまでの花子とのやりとりをひとりであらわしてるところもすごい。
だってくるっと回るごとに男になったり女になったりしてるわけでしょう。
落語でも一瞬で人物が切り替わるけれど、この場合台詞すらない。
しぐさだけでの女、男。しかもお互いあふれるような情がある。
ああ眼福、眼福。ごちそうさまでした。
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