http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/2007/01/post_1.html
前日電話確認したら当日券は出るというので、
発売時間の10時に浅草公会堂の窓口で補助席チケットを購入。
一階後ろではあるけれどこの劇場はこぢんまりしているし、
花道揚幕すぐわきなので得をした気分。
本日のお年玉・日替わりのご挨拶は獅童さんだった。
浅草での若手新春歌舞伎はフレッシュな味わいが好き。
皆役柄の実年齢に見えるようなところがなんとも新鮮。
昼の部は「義経千本桜」から「すし屋」の段。
愛之助さんが初役で演じる上方ふうの
いがみの権太が楽しみだった。
まずは中村芝のぶちゃんのお里が
可愛くって可愛くってすっかりご満悦。
萬斎さんのハムレットのオフィーリア役にはしんから驚いたものだけど、
このひとは本当に本物のむすめ、本物の乙女と思える。
実際の女よりも純粋に取り出された乙女のエッセンス。
弥助（実ハ維盛）にぞっこんの可愛らしさ。
兄である権太への「びびびびびー」もほんと、かわゆい。
夢見る乙女のくせに積極的で、
いよいよ弥助と夫婦になれると思う嬉しさに
はやく寝よう寝ようとせっつくのも邪気がない。
「お月さまも寝やしゃんしたぞえ」の愛らしさ。
ああ、でもこういう純朴な娘は一転して奈落の底に突き落とされる。
「野崎村」のお光のように。
いそいそと無邪気だっただけに、涙を誘われる。
”絵に見たような殿御”が現れて夢中になった彼女に何の罪があろうか。
だって高貴な身分の方のやつしだなんて知らないもの。
「二世の固めはお許しくだされ」なんて言ってる弥助（＝維盛）が
身勝手すぎて憎らしい。
その弥助は七之助くん。綺麗で華奢なのは役柄にあっているけれど、
いささか痩せすぎているのが気にかかる。あごがとがってるのだもの。
もうちょっと肉がついても良いのでは。
その点、愛之助さんの骨太で肉厚なからだは見ていて気持ちよかった。
なにしろ権太は片肌ぬぐわ尻端折りするわ胸をはだけるわで、
かなり観客に肌身をさらす。貧相な肉体では見苦しくて困ってしまう。
仁左衛門さん監修の上方演出も情が濃くてよかった。
捕らえられた内侍と六代君が後ろ手にいましめられて
しおしおと揚幕を出てくるところからもうじわっと涙がにじんでしまった。
それが本当は権太の女房子供だと私はもう知っているから。
夫のために子まで巻き添えに引かれてゆく女の覚悟と哀れさ。
松明の煙のせいにして涙をごまかす権太。
「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋」の松王丸たちと同じだ。
高貴なお方は傷つかず、血と汗と泥にまみれるのは庶民ばかり。
化粧のせいか演技法のせいか、愛之助さんの舞台顔は
時々とても仁左衛門さんに似ている気がする。ノーブルで大きい感じ。
鮨屋・弥左衛門は男女蔵さん。こういう老けの親父役をやると、
ますますお父様の左団次さんに似てきました。
それにしてもどんでん返しで権太の心根を知って、
手にかけたことを悔やむ「三千世界に子を殺す親はわしばかり」という台詞を聞くと、
いえいえ今はそれが珍しくもないひどい世の中ですよ、とため息をつきたくなる。
お弁当休憩が終って、「身替座禅」。
狂言そのままの趣があるコミカルな楽しい一幕。
持仏堂にこもって座禅をするからと妻をいいくるめ、
その身替りに使用人の太郎冠者を立てて自分は恋人の花子のもとへむかう
大名・山陰右京を、初役の勘太郎くん。
いやびっくりした。また一段と大きくなりました。
もともと上手いひとだけれど、からだ全体から漂ってくる愛嬌、色気。
春風駘蕩たる気分。
これは間違いなくお爺さま、お父様のDNA。しかも若くて綺麗。
ことに花子のもとから帰ってくる時の、振り返り振り返り
官能のあとを思わせる笑みは絶品！
花子とのやりとりを仕方話で見せるのも見事。
素の勘太郎くんは浮いた噂もきかない純情一途な青年と見えるのに、
歌舞伎役者はすごいですね。本当にこれからますます楽しみ。
奥方玉の井は獅童さん。もっとおかしな顔にするのかと思っていたら
意外にもごく綺麗なつくり。でもコワイ。
背はぬすんでいてもデカすぎるし怒るとそのまま般若顔ですから。
もうちょっとおかめ顔の玉の井さんが見たかった。
しかしこの奥様の悋気も過剰なまでの世話焼きも、
夫を愛しく思うからこそなのに可哀想。
狂言の女性像は思った本音をぽんぽん言うので
からっとしていていいなあと思う。
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