ずっと見たくて見損なっていた「王の男」をやっと見ることが出来た。
http://www.kingsman.jp/
池袋シネ・リーブルはきのう休館だったので、
繰り下げて今日が映画の日として千円均一。得をした。
韓国の王朝時代に実在した暴君・ヨンサングンの目に留まり、
王の心を捉えてしまった美貌の女形旅芸人・コンギルと、
彼を心身ともに支えてきた芸人仲間・チャンセン。
宮中の謀略も絡み合って迎える悲劇的な最後。
見る前に抱いていたイメージはまずこんなところ。
しかし見てみるとどろどろした感じはなく、むしろ潔く清々しかった。
幼馴染の芸人同士の絆と恋慕というと、
亡きレスリー・チャンが女形を演じた「さらばわが愛」(←大好き)を
どうしても連想してしまうが、それとは根本的に違う。
性愛場面はまるでなかった。
「さらば〜」では女形ははっきりと女性的な意識で相手役を慕っているが、
コンギルとチャンセンのそれは男女の間柄ではなく同志愛だと思う。
コンギルはたしかに女と見まごうほどの美貌だが、
女っぽいというのではなくクールで涼やか。
吹く風のように、流れる水のように、自然体。
媚びることなく、はむかうこともない。
中性的で天使のような存在。
王に対しても、取り入るつもりは毛頭なく、
むしろ狂王とまで言われた王の心の闇や孤独をストレートに感じてしまい、
彼を哀れに思う心から立ち去れない。
感応力が人一倍つよいのだろう。
王の奇矯ぶりは、幼時に母を毒殺されたトラウマが影を落としている。
ヨンサングンを単なる暴君とせず、
よるべない子供のような部分を見せたチョン・ジニョンは偉い。
昔の毒殺事件を再現したような劇で母を演じたコンギルに対しては、
母への思慕が重なり、聖なる存在となっているのだろう。
三人の三角関係は精神的なもの。
コンギルを演じるイ・ジュンギは硬質な美貌。
もう少し少年だと色子的な危うい感じも出ただろうが、
いたって健やかな青年に見える。
切れ長の目と面立ちは及川光博にちょっと似てるような。
カム・ウソン演ずるチャンセンは不敵なまでに自分の心のままに生きる男。
打たれようと目をつぶされようと、誰も彼の心まで屈服させることは出来ないのだ。
見事なまでの生き方。
王の寵妃・妓生(キーセン)あがりのノクスを演じるカン・ソンヨンは
もっとしたたかな悪女顔かと思いきや、
これも少女のようにふっくらして可愛らしく、いやらしさを感じさせない。
あの最後はお見事。
それにしても芸人の自由さ。青い空に浮かぶ二人。
綱渡りの綱の上は、地上と天の間のどこにも属さない世界。
悲劇とはいい状、あの突き抜けるようなラストは二人の勝利なのだと思う。
もともと韓国の王朝物は好き。
「春香伝」も「スキャンダル」も夢中になって見た。
もちろんチャングムもずっと見ておりました。
古典的な衣装と風俗が好きなのです。
韓国文化にはひかれるし、パンソリや踊りも好き。
「西便制 〜風の丘を越えて」を久々に見たくなった。
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