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2006年08月27日23:41

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風景版画家・川瀬巴水展

二日前の朝日新聞夕刊の紹介記事を見て、
ニューオータニ美術館まで見に行ってきた。
http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/kawase/index.html

川瀬巴水は明治時代の東京に生まれ、幼くして絵に惹かれ、
洋画と日本画を学んだ後、鏑木清方に師事し、
同門の伊東深水に影響を受けて版画の道へ進み、
全国を旅しながらスケッチし、広重を彷彿させる素晴らしい風景版画を残した人。

私はこの人の深い藍の色がとても好きだ。
冴えた青空とそこに浮かぶクリームみたいな白い雲、
暮れ残る空のほのかな明るさなどもそれはうつくしいけれど、
青の濃淡のなかに深く沈んだ夜の風景の情緒と言ったら!
夜の風景は確かにこうだ、と思わせられる。
月の光だけで撮影された石川賢治の月光写真展「月光浴」
の世界に通ずるものがあるような。
http://www.daimaru.co.jp/museum/schedule/tokyo/index.html

水辺の風景には特に心惹かれる。
夕暮れの木場の、材木の浮かぶ川にかかる橋の影がゆらめくさま。
深川の木橋の足元の水の見事な藍ぼかし。
水はもともと映りこみも含めてドラマティックだけれど、
あたりに水溜りの残る雨上がりの景色を描いたものも多く、
作者自身も水の表現には力が入っていたのだろう。

泉鏡花の生きた時代と重なっているから、それも連想してしまう。
鏡花の見ていた景色はこんなふうだったのかしら。
怪異妖変をよく描いた作家だったけれど、
そこにはいつもひたひたと水の気配があった。

地方や郊外を描いた風景は、江戸時代そのままの風情だけれど、
町中となると電信柱や電線も見えるし、行き交う洋装のひともいる。
前近代と近代が交じり合い、古風で、モダンで不思議な感じ。
麻布二の橋の川沿いに立ち並んだ小さな家。
愛宕山の桜の下で遊ぶ幼児。
ほんの少し前まで、確かにこんな風景があったのだ。

それにしても今日はずっと自転車でよく移動した。
小石川植物園でスケッチしたあと、
飯田橋方面に出て市ヶ谷を通り四谷に抜け、
坂道を上って下って上って、やっと紀尾井坂わきのニューオータニへ。
帰りは四谷から新宿通り、外苑東通り、曙橋から住吉町、
余丁町を抜け、大久保通りを経て明治通りへ。

自転車で走り抜けてゆくのはとても楽しい。
私の町・東京、という気がする。
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