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2024年01月18日03:49

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TAR

 いくら地震の経過が気になるとはいえ、毎日毎分そればかり追いかけているわけにもいかず、またお正月番組が中止になったこともあり、持参した円盤を鑑賞していた。
今回は評判が高めの話題作が多かったために大変充実していた。

フォト
『TAR/ター』

 何はなくともまずはこれ。
しかし、一度の鑑賞では情報量や謎の部分が多く理解しきれない。
むろん、ケイト・ブランシェットの熱演はよくわかるが…。

 ところで『DOMMUNE』というライブ配信をご存じだろうか。
そこでは町山智浩がホストになって名作を同時上映しながら解説するという番組がある。
17日の夜に『TAR』が取り上げられた。
ゲストには湯山玲子,Ms.メラニー。

 湯山さんは時折テレビのコメンテーターとして知っていたが、父親が作曲家でクラシックに詳しいということを初めて知った。
Ms.メラニーさんは映画関係の会社に勤める一般人(?)だが、毎年オスカー予想で有名な存在。

 ネタバレありで進めるが、エンドクレジットから始まる構成がトリッキー。
マーラーの交響曲がカギを握る。
グラモフォンから発売になったサントラのジャケットがケッサク!

フォト

 クラシック音楽において指揮者とは何をする人か。
何が指揮者の違いを見出すかと問われたら「時間を操る権利」ということらしい。
同じ楽譜の曲が指揮者によって短くも長くもなる、楽譜通りに演奏しているのに…だ。

 途中、ベッドの上で聞こえてくる曲を聴いて指揮者が誰かを推察するくだりがある。
「なぜここでタメを作るのか」とぼやく。
時間のコントロールこそ神である指揮者に与えられた特権であり、楽団員は何びとであっても逆らうことは許されない。
(この辺のTARのキャラクター像は古い巨匠をイメージしているものと思われる)

 いまどきのハラスメントの問題が提示されて、そこには女性でも男性も権力者は同じではないかという疑問がわく。
同性愛者のTARはパートナーがいるにも関わらず若い好みの子を見つけるとつまみ食いをしてしまう。
(ひと昔前の男性指揮者が同じ行動をとってもさほど問題視はされなかったであろう)

 画面をよくよく見ないと気が付かないのだが、時折画面に映る謎の赤毛の女性は何者か。
暗がりの部屋の奥にもうっすらと浮かぶそうだが、通常のテレビ鑑賞では気が付かないレベル。
(なんでもその場面の明るさを調整してやっと気が付く程度という)

 子供がぬいぐるみを並べて遊んでいるシーンがあるが、ぬいぐるみの位置関係がオーケストラのようになっていることに注目。
子供がつぶやく鋭い言葉にドキリとする。
体力づくりのためにランニングやボクシング(サンドバッグ打ち)をするTAR。このパンチ力がクライマックスの伏線…なんだそう。(笑)

 指揮者を目指す秘書役の助手の動きをつぶさに観察しているとスマホ撮影やカバンに本を忍ばせる箇所などに気が付くはず。
(これ見よがしには映さないので一度さらっと見てもわからないかも)

 TARの師匠はL・バースタインという設定のようだが、バーンスタイン自身もセクハラ・パワハラ問題があったそう。
劇中のTARも音楽の才能は計り知れずに、まさしくマエストロなのだが、それと人間性は同一視していいわけではない。
過去のパワハラから命を絶った女性の存在。
それが表面化して職を追われ、アジアで仕事を見つけるTAR。
クラシック界では欧米での演奏がトップで、アジア圏で仕事をするのは都落ちである。
(昨今は中国での演奏会が盛んらしく、アジアツアーで日本を飛ばして中国だけで商売するのも多いそうだ。もはや日本は三流国じゃよ)

 欧米の名だたる楽団から見放されアジアに行き、マッサージ店を紹介してもらうTARだが、彼女は本当にリラックスするためのマッサージを受けたかったのに性的マッサージ店を教えられる。
ここでも女性従業員の並びがオーケストラ楽団のようになっていて、目と目が合った女性の位置がちょうど楽団での浮気相手のポジションなのが皮肉。
店から飛び出し嘔吐するのは、ここに至って自分のしてきた権力の横暴に気が付く瞬間。

 最後の演奏でヘッドホンをするTAR。
これはテレビゲームの映像とオケをシンクロしないとならないための合図が流れているため。
もはやここでは自分の「テンポ」で時間を操ることはできない。
だが、彼女は現実を受け入れることで指揮者として「復活」を果たす。
悩ましい問題だが、これは現在クラシック界が置かれている生き残りの道(異業種とのコラボ)でもあるとのこと。

 話は本筋からそれるが、ソフトと配信で字幕が違う。
劇場公開とソフトは同じで、配信はWOWOWの放送と同じらしい。
どう違うかというと、配信版の方がTARのセリフが無理やり男言葉に変更しているということ。
レズビアンで父親ポジションだから男言葉にしたのだろうが、性自認と混同しているのではないかという指摘も。

 また見返すたびに何か発見がありそう。


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