「国葬の日」〜1年前のきょうのこと

安倍晋三元首相の国葬がちょうど1年前のきょうだったとは、早々のテロップで知るまですっかり忘れていた。きょうに限って未読の朝刊には“あれから1年”などと載っていただろうけど。きょうと同じような好天の1日、ことしより長袖の人がずっと多いなとか、さすがにマスク率ほぼ100%とか、どうでもいいところにまずは目がいく。

タイトル通り、まさにその日1日の日本を淡々ととらえたシンプルな作り。カメラは国葬会場周辺の東京、銃撃現場の奈良、安倍氏の地元下関、そして現在の日本を語るうえでかかせない広島・長崎・沖縄・福島ほかトータル10地点に飛んでいく。ナレーションはいっさいなく、著名人が登場してもテロップで名前が出ることもない。

また国葬決定に至るプロセスや、その歴史的な背景が語られることもなかった。すべては観る側の予備知識に委ねられていて、まるでそれは「日本国民であればそのくらいは当然知っておくべき」という作り手側の見解のような。そういえばこの手の作品によくある、制作側と撮影対象による取材を巡ってのいざこざ場面もなかったなと。

インタビューを受ける日本全国市井の人々にはさまざまな意見。反対・賛成をくっきり明言するひとよりも、その真ん中で揺らいでいるひとが多かった印象。ちなみに私は自民党葬にとどめておくべきだったのではと思っています。令和ドキュメンタリー映画の旗手というべき大島新監督からの、シンプルに徹したメッセージ88分でした。