移民労働者が多く住むパリ郊外のバンリュー地区。前任者の急逝により、小児科医のピエールはこの街の市長に就任。再開発という大義名分、彼はまず老朽化した団地群の取り壊し計画を推進。いっぽうこのエリア=バティモン5で移民たちの生活をケアしてきた女性スタッフのアビーは行政の横暴に反発、両者の対立は深まっていく…。
いきなり沈鬱なシーンが淡々と続いたあとオープニングロール、そして一転かなりの衝撃を感じる大がかりな場面。この静と動ふたつのツカミを伏線としながら物語はすすんでいく。ピエールとアビーの対立を中心軸としながらも、さまざまな人種・国籍が入り混じる移民たちのけっして楽とは言えない生活ぶりにも目配りを欠かさない。
緊迫の時間が続く大きなヤマ場が終盤にふたつ待っている。まずは行政の側のとんでもない弾圧すなわち強制執行、そしてそれに反発したひとりの住民による暴力的行動。そのどちらもがあまりにも衝撃的すぎて、日本では絶対こんなことありえないと念じつつ、観る側はあまりにもつらいシーンの連続に気持ちが揺さぶられてしまう。
舞台となったエリアは実在、その困難な状況も現実の問題。ただ劇中における過激すぎる展開はけっして”事実に基づく物語”ではないとのこと。おそらくラジ・リ監督(「レ・ミゼラブル(2019)」)としてはここまで大胆に脚色してまで、差別や偏見、貧困の問題を訴えたかったということ。気が重くなったままエンドロールを迎えました。
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