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2021年12月02日15:50

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戻り道を探して、その13

 温泉旅館を借り切ってのパーティというのがあった。取材はお断りだったのだが、そのサークルの会報のようなものに、パーティの手記を無料で掲載するという約束でパーティに参加させてもらった。ところが、この手記が意外と難しいことになった。何しろ、旅館はただの温泉旅館。パーティと言ったところで、大広間で大乱交があるとか、ショーのようなものがあるとか、そうしたことが、いっさいなかったのだ。
 借主のサークルはSМ系のスワップマニアたちだった。露天風呂付きの温泉は男女に分かれていたが、その日は男女の別はなし。食事は大宴会場で一緒にするのだが、しかし、そこで性的な行為は禁止。それだけではない。他のカップルとの会話も禁止されていた。他のカップルと会話する行為は、他の店やサークルへのお客の引き抜き行為と見做されて退会させられるということだった。旅館の大きさは、客間が二十部屋あるかどうかの小さなもの。従ってカップルも二十組程度。当たり前だが旅館の人たちとの会話は自由だが、もちろん、そこでも性的な会話は禁止されていた。これでは、ただの混浴温泉旅館だ、何も借り切る必要までないのではないか、と、筆者は思った。同時に、これで手記を書くのは、かなり難しいと不安にもなった。
 しかし、違ったのだ。性的な行為が禁止されているのは、宴会場のある一階部分だけで、風呂はもちろん、二階の部屋や廊下は何でもありだったのだ。つまり、ドアを開けての行為、廊下でのプレイ、風呂場でのプレイは自由なのだ。ドアが開いている部屋は中に入るのも自由。二階や風呂での会話も自由。それでは、宴会場での会話を禁じている意味がない。
 筆者は最初こそ混乱したが、しばらく、旅館の様子を楽しんでいるうちに、その厳格なルールの意味が分かって来た。つまり、ルールも、また、遊びだったのである。
 宴会場での食事中の他のカップルとの会話が禁止されていることで、より如何わしい雰囲気になり、不安とか恐怖とか羞恥というスパイスが加わることになるのだった。
 それでも、この不思議なパーティを手記にするのは難しかった。こうして思い出しながら書いている今も、あれを完全に伝えきれてはいないな、と、そう思うほどなのだ。
 さて、どうだろうか。もし、このパーティについて、きちんと伝えようとしたら、一万文字ぐらいの文字数が必要になりそうなのだが、そんなパーティが今もあるだろうか。そんなパーティがあったら、その内容を読む人が少なくて成立出来ないのではないだろうか。文章をきちんと読める人にしか理解出来ないパーティ、参加出来ないパーティ。それは何とも面倒なのだが、そんな面倒がよかったのではないだろうか。
 誰でも参加出来る、かんたんに参加出来る、そうしたものとは違うもの、そんなことを最近のエロは見失ってしまったのではないだろうか。
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