アフリカ北西部の国、モーリタニアに住む青年モハメドゥは、9・11アメリカ同時多発テロに関与した疑いを持たれ、家族の前で強制連行される。裁判の機会も与えられないまま、キューバにあるグアンタナモ収容所に送還、そこでは拷問の続く過酷な日々が待っていた。監督は実録物やドキュメンタリーを得意とするケビン・マクドナルド。
これは国家による不当拘禁ではないかと、真相の究明に乗り出した弁護士ナンシーを演じるのがジョディ・フォスター。実在する人物に似せたせいで白髪にシワの目立つ顔つき。これまで彼女(1962年生まれ)が演じたもっとも年長の女性ではないかと。その厳しい立居振る舞いぶりが評価されてゴールデングローブ助演女優賞を獲得。
米国軍側の弁護人(ベネディクト・カンバーバッチ)に対抗しつつ、ナンシーたちの調査が進む前半部分はわりと淡々とした展開、いわゆる法廷物ではないので起伏にも欠けていたが、時間を巻きどもした過去のモハメドゥが挟まれるやあまりにも壮絶な日々の連続、これは事実を超えた過度な演出であってくれと願う気持ちが高まってくる。
事実に基づく物語、エンドロールと並行して流れる映像や文言はおきまりの展開。ただ今回は深みと奥行きがあるので、観る側の想像力はさらに喚起される。けっしてあってはならない国家権力の横暴と強く思ういっぽう、いわゆる商業的な作品にもこういう問題を提示できる自由がアメリカにはあるのだなと深く感じた次第です。
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