沙緒里(石原さとみ)と豊(青木崇高)夫婦の愛娘、6歳の美羽が突然失踪。ふたりはビラまきはじめあらゆる手段で彼女の行方を探るが、世間の関心はだんだんと遠のいていく。反してネット上にあふれるのはふたりを誹謗する文言の数々。この苦境に寄りそってくれた唯一の存在が地元テレビ局の報道記者・砂田(中村倫也)だった…。
石原さとみがヒステリックにときには錯乱状態にまでおちいる若き母親を熱演。自らアピールして得た役柄だというが、そのすっぴんな外見もふくめ、これまでの彼女にはなかった、観ている側があまりにも辛く感じる女性像が全編に。ただ彼女のテンションの高さのわりは、物語全体の空気感が低温で醒めたままだったのが興味深い。
観る側の感情を高めるべき音楽は最小限、静かな緊張感とともに物語が推移していたことがその要因かと思うけど、終始淡々とした印象をあたえる砂田の存在にそれは大きく依存、彼の役割が薄らぐ終盤がやや間延びして感じられたのはそのせいでは。どちらにしても石原さとみ同様、中村倫也にとってもこれが代表作となるはず。
「空白」「愛しのアイリーン」など、これまでの傑作以上に細やかな演出が光る吉田恵輔監督のオリジナル脚本。つまり原作小説もコミックもなく、映画を観た者にしかこの結末はわからない…そんな当たり前のことを書いてしまうのは、収束に賛否があるとはいえ、映画作品ならではの繊細な表現がそこには待っていたからです。
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