『
その手に触れるまで』
ダルデンヌ監督の新作はベルギーで暮らすムスリム系移民のとある少年の話。
ごく普通の少年だったアメッドが尊敬するイスラム教の指導者の影響で狂信者へと変わってゆく。
親は、教師は、周囲の人々はアメッドを以前のような少年に引き戻すことができるのか。
敬虔なムスリムは女性には触れないと熱心に教えてくれる女性教師とは挨拶の握手すら拒む。
見ていて心が痛むほど危うい道を突き進むアメッド。
ほのかに芽生えた恋心、彼女の愛情は変えることが出来るのか。
昨日まで何ともなかった人物がテロ行為を厭わない狂信者に変貌するニュースを耳にする。
その原因を解明しようとするドラマはあったが、本作では原因追求よりもいかにして人間らしい心を取り戻すのかに焦点があてられる。
とりもなおさず過去よりも未来を大事にするというメッセージなのか。
コロナ禍で手を取り合って助け合うことが物理的にしにくくなった今だからこそ本作のテーマはより深い意味を持つ。
ダルデンヌ作品らしくカメラは主人公を間近で追いかける、一時も目を離させまいと。
本作も無名の俳優たちがキャスティングされ、半ばドキュメンタリーを思わせる。
複雑なドラマ性を排除して、核心のみにフォーカス。(娯楽性の物語を求める向きには物足りないかも知れない)
アメッド役の重要度が高いのは言うまでもない。
危うさ、もろさ、そしてピュアな瞳を持つイディル・ベン・アディが見事に体現。
自分がそれぞれの立場の時にどういう行動をとるのか、何ができるのかを問われているようにも思えた。
シンプルなだけに余韻が響く。
カンヌの常連であるベルギーの名匠、ダルデンヌ兄弟は本作でも監督賞を受賞。
ところで原題はLe jeune Ahmed(英題:Young Ahmed)。
「少年アメッド」くらいの意味だろうか。
ちょいと邦題は持って回った言い回しに感じる。
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