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2020年06月08日14:45

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5月を振り返って

良い季節なのに気持ちが晴れず苦しかった月。
それでも4月半ばの先の見えない重苦しさよりは、
少しだけトンネルの先が見えてきた気がして、
気持ちをなだめることが出来るようになった気がする。

4月は中旬から職場は入構制限で一切行けなくなったけれど、
連休明けからは入構願いを出しながら、
交代で週一回出勤出来ることになったのが大きい。
社会生活に参加している気がするから。
外出自粛と言うのは、目に見えない縄で手足を縛られているようで、
これが軟禁生活というものか、と思った。
気持ちの縛りがきつい。

なんだかじたばたと、何かしら関わり合いを持ちたくて、
医療に役立つなら、と近場に献血しに行ったり、
綿が出てくるようになった布団の打ち直しを
近所の布団屋さんにお願いしたり。

美術館、博物館、映画館、図書館が閉じたままなのは
胸にぽっかりと穴が開いたようで、
今まで普通に行けていたことがいかにありがたいことだったか痛感。
辛うじて許されているのは運動のための公園行きくらいだから、
在宅勤務の時間が終わるとすぐに外に出て緑を眺めながら歩いた。

それも同じところばかりでは飽き足らず、
週末はどんどん遠征するようになった。
自転車を長時間漕ぐのは慣れているから、
電車じゃなくても遠出は出来る。
風のように走ってゆけるのが良い。

<公園>
・哲学堂公園(中野区)
・平和の森公園(中野区)
・梅里公園(杉並区)
・和田堀公園(杉並区)
・井の頭公園(吉祥寺)

<TV>
相変わらずNHK主体の視聴。
今期朝ドラはダメ部類なのでもはや見ていない。
(駄目ドラマを見続けると出てる役者さんのイメージダウンになるばかり)
大河ドラマ『麒麟が来る』はどんどん面白くなっていて、
毎回釘づけになっている。染谷信長は本当に新鮮で嬉しい驚き。
撮影自粛のため6月初めで途中中断は残念だけど、楽しみに待ちたい。

よるドラマ『いいね!光源氏くん』は、
始まる前はあんまり源氏をおちょくられたら
イヤだなと思っていたけど、
(昨年『あさきゆめみし』や田辺源氏を読み返し、
再び源氏熱が高まっていたせいもある)
こんなにはまるとは思っていなかった。
衣裳や所作がピシッとしてるのはさすが安定のNHK。
加えてキャストが皆良い。伊藤沙莉ちゃん大好き。
千葉雄大くんはこれまでそんなに興味なかったけれど、
この役は子どものように愛らしく無邪気で品があってほんとに素敵。
たくまずして愛される源氏にぴったりかも。
ほっこりもしたし切なくもあり。
宇治で心を締め付けられ、最終回は思わず泣いてしまった。
この時期に放送されて本当にありがたかった。感謝。
『アシガール』の再放送も似たニュアンスで心なごむ。

Eテレにもお世話になりっぱなし。
『ドキュランドへようこそ』の各国ドキュメンタリーは、
下手なドラマを見るより見応えがあり録画して見ている。

<読書>
図書館もやっていないし書店も限定営業だったので、
部屋の中にあるものを読み返すしかなかった。

・梨木香歩「からくりからくさ」
・杉浦日向子「一日江戸人」(新潮文庫)
・ユリイカ「特集 杉浦日向子」(2008年10月臨時増刊号)
・季刊雑誌「歌舞伎」義経千本桜特集号(第9号)
・村上春樹「海辺のカフカ」(上)(下)(新潮文庫)
・「村上春樹ブック」(文學界1991年4月臨時増刊)
・村上春樹「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」
(上)(下)(新潮文庫)
・村上春樹「スプートニクの恋人」
・村上春樹「遠い太鼓」
・CD-ROM版村上朝日堂「スメルジャコフ岱織田信長家臣団」
・萩尾望都作品集9「半神」17「A-A'」
・アレクザンダー・ケイ「未来少年コナン」(角川文庫)

梨木さんの「からくりからくさ」は
私好みのものばかり入っている大好きな本で、
思い出したように読みたくなる。作者は私と同い年の方だ。

日向子さんや春樹さんも定期的に読み返したくなるのだけど、
少し部屋の整理もしたので陰で埋もれてたタイトルも久々に読み返したり。
スプートニクは何年振りだろう。
樹から降りてこなかった猫のエピソードは、
春樹さん自身の思い出だったのかと今は分かる。
良い本は何度読んでも新鮮に面白くて新たな発見がある。

この4月からNHK総合で「未来少年コナン」が再放送されているので、
久々に原作(と言えるのかな、原案?)を引っ張り出したのだが、
読み始めてすぐ、そうそう、これアニメとまったく別物で読む気をなくし、
冒頭だけでやめて読んでなかったんだと思い出した。
キャラ設定も相当違う。ラナが金髪って書いてあってショックだったもの。
ダイスはもっと非情で愛嬌も何もない。モンスリーに当たる女性は
調査戦闘隊員ではなく「市民ドクター・マンスキー」として出て来る。
上下関係としてはダイスより下というのも違っている。
レプカ(原作表記はレプコ)は長官ではなく下っ端でうすのろの大男。
全然違うにも関わらずアニメキャラの絵を挿絵に使っているから違和感大。

多分アニメ放送に合わせてこの装丁で売り出され、
目に留めて購入したのだろうけど、
アニメの面白さは宮崎駿氏の想像力・構成力の賜物だ。
育ててくれた父(おじい)との別れと旅立ちなど、
ホルスのイメージも組み込まれている。
ちなみに原作初版は『The Incredible Tide 』
(大高潮[大津波]、1970年)で、
邦訳初版は「残された人々」
(岩波ジュニア・ベスト・ノベルズ、1974年)。

萩尾望都作品も折に触れ読み返すけれど、
今回の外出自粛、対面自粛の異常事態で
かなり心にダメージを受けている自覚があり、
『半神』の中に入っている短編『スロー・ダウン』がことに心に響いた。

何もない閉ざされた部屋で、感覚遮断の実験を受けている少年。
照明は暗く、かけたメガネにはくもりが入っていて、
どんどん実感が失われてゆく。
唯一の刺激である食事のパネルボタンを押したある一瞬、
パネルの向こうから食事を出すマニキュアをした手が見えて
反射的に掴んでしまう。この切実感。
実験が終了した時、その手の主を見て
「あ、ほんものの手だ」とニコっと笑う。
その後外に出たあと、何もかも実感がなくてうそみたいだと感じる。
 ほんとのことは何もない / ぼくはひとりで死んでゆく
 ぼくに手をおくれ / −ほんものの手を!

そう、リモートじゃなく、機械の向こうからじゃなく、
ほんものの手をにぎりしめ、ハグしたいと
飢えるように身につまされた。

<お別れ>
大っぴらに外に出られない間に、
大事な場所がいくつも閉じてしまった。
秋の閉館は予告されていたものの、
前倒しで閉めてしまったNHKスタジオパーク。
いつも展示が楽しみだった京橋のリクシルギャラリーもひっそりと。

そして何より痛手だったのは目白のギャラリーゆうど。
一軒家の古民家を改装し、良いお水の出る井戸を持つギャラリー。
ここでの催しでは庭でべんがら染めもしたし、
浴衣地でブラウスも縫ったし、
椿油で足マッサージもしたし、
新米食べくらべの会で美味しい御飯も食べた。
谷川俊太郎さんの自作詩朗読も聴けたし、
三味線の小唄やらマンドリンやら、
色んなダンスも観ることが出来た。

実家をなくしたあとも、ここがおうちのような気がしていた。
玄関を開けると三和土があり、お庭があり、縁側があり、
雨戸があり、台所があり、井戸があり、畳と板の間がある。
精神的支柱をコロナ禍のさなかに失くしたことは本当に辛い。
まだ気持ちのうえで受け入れられていない。
これからもきっとそうだろう。

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