『
荒野にて』
『さざなみ』で心に波紋を投げかけたアンドリュー・ヘイ監督の新作。
ずっと心待ちにしていたので初日(!)に鑑賞。
これまでに鑑賞済みの作品もいくつかあるのだが、まずは記憶が鮮明なうちに…。
言って見れば<自分の居場所探し>の物語。
頼るべき者がなくなった不遇の少年チャーリーが偶然世話をすることになった競走馬に心を寄せながら自分のいるべき地を求めさすらう。
一人で生きるには15歳の少年には世の中は酷である。
『さざなみ』もそうだったが、道や風景を心理に巧みに置き換えて見せる演出はお手の物。
本作も道路から始まるがその景色は未来を予兆する。
冒頭での馬との出会いから古典的な名作の匂いが醸し出されるが、決して期待を裏切らない。
チャーリーが世間の厳しい荒波の中で必死に生きようともがく姿に共感できる人も多いのではないか。
ともすれば何ということのない物語だが、重心の低い演出はヒリヒリと突き刺すものがある。
目をそむけたくなるような箇所もあるが、どの登場人物も単純に善悪と言った偏ったキャラクター付けをしていない。
それゆえに信用できる。
何もない過酷な荒野をさすらう姿は世間の厳しさそのもの。
そんな困難に一人で立ち向かいながらたくましく成長していく様が見どころか。
フィリップ・マーロウの台詞「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」がふと脳裏をよぎる。
強がって生きてきたチャーリーがふと15歳の少年に戻る瞬間に思わず落涙。
『ゲティ家の身代金』などのチャーリー・プラマーが台詞を抑えたチャーリー役を繊細に演じる。脇を固めるS・ブシェミらの個性的な面々も魅力的。
ログインしてコメントを確認・投稿する