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2018年09月30日00:13

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千年の愉楽

『千年の愉楽』
 まあだだよもぬるい水も遺作の覚悟があるかのような描き方であったけれど、いつのまにか亡くなっている主人公の安らかな死に顔をみるとワカマツもこれが遺作となると覚悟があったのではないか、と見紛うばかりである。旦那に話していく男たちのイストワールだけれど、ラストの染谷将太に関しては旦那には内緒にして墓の中までもっていく、といった風情であり、ラストの短くも艶やかなエロ、まさにワカマツ的な情動が昇天するセンスを放つ。よかった。リズムとエロスがある。人生の奥なる輝きを宿らせる。中上健二曰くの路地生まれ路地育ちやってきたのはワルいことばかりYO!はワカマツの活動を畏敬をもってリスペクトするブロ。よっ兄弟、血と血は争われねえ、これは悲劇的な運命なのではねえ、秘儀という、タイトル通りの千年の愉楽なのである。高良健吾はかっこよかった。高岡蒼佑はその存在感を活かしきれていないところあったけれど、ほどほどかっこよかった。『酔いどれ天使』の三船敏郎ほどワイルドではなくても戦後混乱期に在る躍動感を、ふたりはそのハンサムに表している。でも、彼等だけであったらなんだか武勇伝なのか、チャラ男のハンパ者人生哲学なのか、路地を悩むだけの神経衰弱なものなのか、ナニがなんだかわからないまま、とそれだけに終始していたかもしれないが、ワカマツらしく慈愛を放つ母性が彼らを受け入れ包み込もうとするから愛が輝く。ワイルドなんだろうけれど、ヤンチャとナヨナヨした弱さも、慈愛に包み込まれるときには表され、そのことは寧ろ、人間的なリアルを届けてくれる。人間であること、リアルであること、それがあるから、終盤の喘ぐ肉欲が、近親相関的な歪なもの、或いはギリシャ神話的なものとして表されるのではなく、愛そのものをリアルに感じさせてくれるのである。ワカマツは男たちほど女たちを強い個性をもたせ描かないが、だからこそ、目に見えない情動のラインを心の奥底に輪郭ハッキリと感じさせる。ラスト・シーンの岩は人生がはじまる膣を表すだけなのではなく、様々な道程を掻い潜る道を霧の深淵に描いてみせている。


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