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2018年09月15日23:00

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嵐を呼ぶ十八人

『嵐を呼ぶ十八人』
 日活のあの作品のタイトルを拝借し客寄せパンダにしているのかのようにも思えたが、観ていくと、本家と違い現実はカッコよくもオシャレでもなんでもないのだ、というリアルを叩きつけることワザと意図してタイトル使ったのかと思わせてくれる。表現的なものにおいては、羽仁進のメソッドも取り入れたのだろう。タイトルからイメージさせるものは無頼漢たちが主人公のアクション物であるが、さにあらず、人数が表示されるタイトルから結び付けられるものは寧ろ、二十四の瞳に近い、先生と生徒の交感が表されるもの。そうした内容であっても、感傷的なものへと導くのではなく、プロレタリアート的現状そして彼らの距離感をあるがままに見せていこうとする。当時の風俗もふんだんに表され、昭和の愛好家には、なにかオモシロさネッセサリーに感じさせてくれる。巨人大鵬卵焼き的な意味での野球や、ゴーゴーダンス、ストリップ、映画館、オンナを買うこと、立ちんぼ、屋台スタンド、バー、バレーボール、そしてなにより昭和的な風景、存分に楽しませてくれる。昭和が描かれてもなにか古さを感じさせないのは、喜重のドライなタッチと躍動するカメラワークがモダーンだからであろう。街での18人の動きとイメージ、よかった。喜重は難しい、というヒトがけっこういるけれど、喜重って視覚的ムーヴメントに関してはけっこうエンタメしている。感傷に導かずリアルを現わさんとすると前述したが、それでもやはり、松竹路線も松竹で製作された作品らしくちゃんとあるのであり、メロドラマ的な要素はメインとして取り込まれている。主人公と香山美子とのラブストーリーが作品の支柱としてあり、それがクサく表されるのではなくとてもよかった。悲劇的な末路にならず、遂げられる想いが表されホッとさせられるものがあるからよかった。飲み屋にツケがありだらしなさを見せたりするのにオンナを買うことには嫌悪感を示し、なんだか数多ある映画に表されるステレオタイプ的人物イメージとはこの主人公、ギャップを感じたりしたが、それも最後まで観ると納得させられる。そしてそのこと、寧ろ人間のリアルを思わせてくれる。



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