『
残像』
ポーランド映画界を代表するアンジェイ・ワイダの遺作。
これまでも社会問題を提起する硬派な作品を送り出してきた。
これで最後になるのは寂しいが、しっかりと監督の遺言を聞き取らねば。
実在した前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの生涯を通して語られる全体主義国家の恐ろしさ。
全体主義に抵抗したばかりに何もかも取り上げられた悲劇は幾度となく語られたことだが、第二次世界大戦中にレジスタンスに参加したワイダの手にかかると説得力が増す。
全体的にはくすんだ色彩だが、その中にあって鮮やかな色の演出が映える。
部屋が赤く染まる瞬間に息をのみ、別れた妻へ贈る花の色など随所にハッとさせられる。
画家ストゥシェミンスキの口から語られる芸術論が作品のメッセージそのものなんだろう。
厳しい環境下で父の世話をやく娘の行く末が気がかり。
ラストシーンの突き放し方も忘れがたい見事なもので腸をえぐられるような思いにさせられる。
劇中で、教師だった画家は学生たちと協力して“著書”を残そうと奮闘するが、それはまるでワイダ監督そのものではないか。
“共謀罪”という正体がよくわからないもので思想の自由、内心の自由を危うくされそうになっている現在の日本人にとっても他人事ではないように思う。
つくづく“芸術家”A・ワイダは生涯を通してブレることがなかったのだと感服する。
これは“抵抗”の物語であるとともに、国家に消された一流芸術家の復権の物語でもあったろう。
監督の残像はしかと焼き付いた。
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