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2016年03月17日22:20

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『母よ、』

『母よ、』

 イタリアの名匠ナンニ・モレッティにとってマイルストーン的作品だろうか。
がむしゃらに人生を突っ走り、折り返し地点でふと見渡せば、反抗期の子どもと老いた親がそこにいる。
そういう世代には身に染みる話ではないだろうか。

 誰だって仕事でいらだち、家庭内で悩みを抱えていたら思わず爆発したくなる事もあるだろう。
新作映画は順調に行かず、母の介護だけじゃなく娘や兄の私生活問題と幾重にもトラブルが重なる映画監督マルゲリータに伸し掛かる心労。
病床の母にXデーが近づく恐怖感を“夢か現実か分からないシーン”の挿入で丁寧に描写していたと思う。
(これらは興味深い比喩だった。)
主演俳優として迎えた米国“有名”俳優役のジョン・タトゥーロがシリアスで堅苦しくなりそうな話にユーモラスな空気を運ぶ。
元々映画撮影の内幕物の面白さがあるのだが、さらなる映画の小ネタが楽しい。

 モレッティ監督自身が『ローマ法王の休日』製作中に起きた自身の母親の介護の様子を基に描かれたそうで、映画化することで監督自身が一区切りつけようとしている印象も受ける。
さすがに同じ男性監督ではモデルに近すぎると判断したのか、マルゲリータという女性監督(マルゲリータ・ブイが演じる)に置き換えられている。
監督マルゲリータが常に役者に言うアドバイスもモレッティ監督の口癖らしいので、投影に間違いあるまい。
そのモレッティ自身は兄役として寄り添うように出演するのも、現実を客観視しようとしている気がした。
母アーダ(ジュリア・ラッツァリーニ)はラテン語の堪能な役柄だが、実際に監督の母親もラテン語の教師だったという。

 堂々とした撮影や演出で、名女優マルゲリータ・ブイの見事な存在感に惹きつけられる。
劇中で撮影される映画がさらりとイタリアの抱える社会問題となっているのも相乗効果を感じた。

モレッティ監督の人や家族、人生への暖かなまなざしを感じる作品。

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