『
サウスポー』
ボクシング映画に傑作は多いが、またもその仲間入りの誕生か。
無敗のボクシング王者ビリー・ホープの人生を通して栄光と挫折、そして失ったモノを乗り戻す過程がドラマチックに描かれる。
公式サイトを見ると、
エミネムの新曲「Phenomenal」をフィーチャーした予告編が真っ先に飛び込んでくる。
エミネムが楽曲を提供したのは、この物語自体が彼の半生を基にされているからに他ならない。
元の企画ではエミネム主演の『8mile』の非公式続編として計画されたようだが、紆余曲折を経てこのような形になったらしい。
切れあるアクションを撮ってきたアントワーン・フークア監督がエミネムの人生をモデルにした映画を描くのに音楽じゃなくボクシングを選択したのは、監督自身が元ボクサーという経験もあるだろうし、より<闘う表現>の具現化し易い点があったのだろうか。
対戦相手に本物のボクサーを起用するリアリティは過去の有名なボクシング映画と比べても引けを取らない迫力あるファイトシーンになっていたと思う。
B・ホープの最大のライバルが黒人ボクサーなのは、
黒人が主流だったヒップホップ界に挑んで道を切り開いた白人エミネムの姿を思わせる。
再起をかけたB・ホープに力添えするトレーナーの人生も相乗効果を表している。
『サウスポー』はもちろん左利きの意味で演出上の意味を持っているが、語源を紐解くと野球の左投げのピッチャーから来ているようだ。
所説あるようだが、いずれにしろ“少数派”であることは間違いなく、それもエミネムと重なる。
キャストが魅力的で、愛妻モーリーンにレイチェル・マクアダムス、再起の手伝いをするトレーナーにフォレスト・ウィテカーらが魅せる。娘レイナ役ウーナ・ローレンスの自然な表情は好印象を与える。
しかし、
なんといってもビリー役のジェイク・ギレンホールに尽きるか。
近年、一作ごとに存在感を増している実力派で、半年かけたという肉体改造も見事だが、それ以上に役が乗り移ったかのような演技には圧倒される。
大事な事件の顛末がウヤムヤなのは気がかりだが、過去よりも未来を見据えることの重要性を伝えたかったのだろうか。
2016年6月公開予定
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