『
さざなみ』
「私と知り合う前の過去なんて気にしないわ」
“大人の女性”のこういう会話を耳にすることがあるが、男は決して鵜呑みにしてはならないと思った。(笑)
いくら長く連れ添っても元をただせば夫婦は他人。
想い出話をトクトクとされて気持ちが休まるわけはない。
まして直接やりあえない状況では…。
英国のある地方で愛犬とともに仲睦まじく暮らし、結婚45周年を迎えたケイト(シャーロット・ランプリング)とジェフ(トム・コートネイ)の熟年夫婦。
祝賀パーティーを間近に迎えたある日、夫あてに一通の手紙が届く。
長年、ともに艱難辛苦を乗り越えてきたはずなのに、この日から夫婦の間には何とも言えない空気が流れだす。
原題は『45 Years』。それが『さざなみ』となったのは分からなくもないが、どうしても『さざなみ』と聞くと大杉漣の名を思い出してしまうなぁ。(笑)
平凡だった日々に終わりを告げるようにほじくり返される過去。
美化して思い出を語る無神経な夫に妻の心は分からない。
些細な出来事ではあるが、それを機に自分の本心に気が付く怖さ。
それまでと同じ風景を眺めていてもコインがひっくり返ったように、何もかも意味深に変わるのが面白い。
夫ジェフが読む本の内容がとても興味深く、彼の置かれている心境を上手く言い当てている。
一つには老いの問題があるだろう。
いい歳して過去にこだわる自分にも嫌気がさすだろうが、それが人間。
文字通り“氷漬けにされた過去”が融けて蘇る恐怖感がランプリングの表情によくあらわされていた。
メガホンを取ったのはまだ42歳のアンドリュー・ヘイ。
原作が短編らしくシンプルな構成だが、<恋人>と<結婚>の違いも良く描けていたと思う。
何といってもベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞したシャーロット・ランプリングの演技が見所。
往年の懐メロが演出のカギを握る。
熟年カップルで見に行くと帰りは疑心暗鬼になりそう。(苦笑)
4月9日より公開
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