『
ディーパンの闘い』
『預言者』、『君と歩く世界』のジャック・オディアール監督の新作、カンヌでパルムドール受賞という華々しい成績も期待を膨らませる。
内戦下のスリランカから逃げ延びた3人が偽名を使い疑似家族となってフランスで暮らす。
ウソの生活はいつほころびが出るかと不安でならない。
祖国を離れ多少のトラブルはあっても平穏に暮らすうちに赤の他人同士だった3人にも感情が芽生え始める…。
守るべきものを手にした時に、人は強くなれるお手本のような作品。
現在、フランスはじめ欧州が抱えている人種、難民、宗教問題などが見え隠れして、オディアール監督の硬派な社会派映画と思いきや、終盤でジャンルが変わる。
例えて言えば、精進料理のコースを食べていると思ったら、メインディッシュが分厚いステーキ肉だったみたいな違和感を覚える。(「キネマ旬報」を読んでいたら突然「映画秘宝」に変わっていた…みたいな?)
しかもデザートは砂糖の分量が多すぎ。(苦笑)
一流の素材で一流のシェフが調理しているのは間違いないと思うし、それぞれの料理は美味しいと思うのだが、同じコースに並ぶのか、これ?
タイトルは『ディーパンの闘い』とある。だから闘うことは想定内だし伏線もあるが、劇中で描かれる『闘い』だとは予想だにしなかった。この『闘い』を見せたいなら冒頭の設定は不必要ではないのか?
娘のことがフェードアウトしてゆくのも心残り。
書きながら話が変化していったのだろうか。
もっともこう言ったジャンルの垣根を超えるのが新しい作劇なのだろうか。
ペキンパーの『わらの犬』を参考にしたと聞けば、合点の行く箇所はある。
ディーパンを演じるのは、現在は亡命して作家となっている元兵士だったアントニーターサン・ジェスターサン。演技の力は未知数でもそれだけに真実味はあるし、他の役者では出せない凄みを感じる。
試写会で拝見したのだが、山下敦弘(映画監督)、松江哲明(ドキュメンタリー監督) 二人の現役監督のトークショーがあった。
山下監督は『タクシードライバー』、松江監督は高倉健が思い浮かぶと言っていたのは分かる気がする。
自分も任侠映画の匂いを感じた。
さすがに公式のイベントで、あまりくさす様なことは言いにくいだろうが、山下監督は審査員のコーエンが選んだと強調。
また、「こういう作品が受賞するんだね」と少しチクリ。
「入り口と出口が違う」…は一致するところか。
「この映画にカタルシスは必要だったのか」とさえ。(笑)
個人的にも同じ年のカンヌでグランプリ受賞(2等)した『サウルの息子』の方がパルムドール(1等)にふさわしい気がしたのだが…。コーエンとは趣味が違うのかな。(苦笑)
試写会@ユーロライブ
2月12日公開
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