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2016年01月29日00:59

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『サウルの息子』

『サウルの息子』

 第二次世界大戦中、ナチスが働いたユダヤ人狩りはよく知られているが、それに協力した近隣諸国もある。これの製作国のハンガリーもその一つ。

 1944年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で同胞のユダヤ人をガス室に送り込む任務をさせられた<ゾンダーコマンド>のサウルの二日間を描く。
ナチスは自らの手を汚したくなかったのか<ゾンダーコマンド>(特別部隊)の名でユダヤ人自身に虐殺仕事を強制していた。
そして彼らも定期的に“入れ替え”が行われる。

 まるでサウルの追体験をするようにカメラはとらえる。
緊張感は並々ならぬものでワンカットが長く、セリフも少なく、スタンダードでほぼ対象者のみを切り取る。
残虐な背景の処理はぼかされ、サウルの無表情がなにより雄弁に状況を物語っている。
そんな状況下で人間性を保つなんて到底出来そうにはない。
ある時、一人の少年の死体を見て「息子を正しく埋葬したい」と画策するサウル…。

 これは魂の救済を描いたのではないのか。
メネシュ・ラースロー監督は「サウルがモラルを取り戻そうとする二日間」と語ったそうだが、サウルのモラルだけでなくハンガリー人である監督が戦争中にナチに協力した祖国ハンガリーのモラルを取り戻す思いも込められていたのでは?
いずれ自分も同じ目にあうことを知りながら同胞を殺す手伝いをすることの葛藤や矛盾は想像もつかない。
しかし許されない行為をしていてもホンのわずかでも正しい行いをしたい。それが支えになるのもまた人間心理だろう。

 <息子>というのは比喩的表現であると思われるが、<息子の死>という絶望の中で見たささやかな希望が余韻を生む。
本作で長編デビューというメネシュ・ラースロー監督がタル・ベーラの助監督を務めていたのは頷ける。今後追いかけてみたい一人。

 カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。
きっと今年のアカデミー賞外国語部門も取るだろう。

フォト


 メネシュ・ラースロー監督は過去に『With A Little Patience』という短編を撮っている。
WEBで全編鑑賞可能で、それを見ると手法も主題もその拡張版といえるかもしれない。
セリフがないので鑑賞にはさほど問題はないと思う。(冒頭のT・S・エリオットの文章だけ対訳が必要か?)
SFJFF Presents: With A Little Patience



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