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2015年10月08日01:45

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『岸辺の旅』

『岸辺の旅』

 ははぁ、岸辺ってその岸辺か。
湯本香樹実の原作を基に比較的忠実に作られたという黒沢清監督の一風変わったロードムービー。

 カンヌの<ある視点部門>で監督賞を受賞したと聞いていたが、なるほど特殊な視点だったんだ。
確かに欧州人が好きそうな世界ではある。
現世に思い残すことがあると魂が彷徨うなんて話も聞くけど、スタンスはそんなところか。

 3年前に行方不明になった夫・優介(浅野忠信)が妻・瑞希(深津絵里)の前に現れる。
こともなげに「俺は死んだよ」と告げて…。
そこだけ聞けば、亡き夫を思う妻が呼び寄せたありがちなスピリチュアルものかと思うが、そこは黒沢清監督。
穏やかで優しい夫婦関係のラブストーリーでありながら、些細なシーンでも背筋がゾクッとなる緊張を感じる。

 興味深いのは夫婦間の問題なのに、自分たちの話より他人の世話に集中すること。
そして結果として自身に返っていくという点か。
淡々と紡がれる旅の終点はほぼ読めるが、生前、優介が世話になった人物を訪ね歩くというのも一つの供養なんだろう。

 新聞配達員の島影(小松政夫)の先の読めない存在感や中華料理店の妻フジエ(村岡希美)の突発的な激昂に目が覚める。
島影の部屋の演出は十分に映画的でハイライトの一つか。
短いながら深津絵里と蒼井優の対峙は見ごたえあった。
予期していてもメロンパンにはドキドキする。(笑)

 ただ、優介は星谷(柄本明)の住む農村で、「難解な話でも引き込まれるほど上手い」語り部とはとても思えなかったのだが…。(苦笑)
そこを除けば役柄に浅野は合っていたと思う。

魂が彷徨っていたのは現世を生きる妻の方…か。

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