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2014年12月25日06:43

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春の坂道

 何十年も前に放映されたNHKの大河ドラマのタイトルです。

 江戸幕府の剣術指南役であった柳生宗矩の生涯を描いた作品なのですが、NHKの何かの不手際で作品のVTRが消失してしまったらしく、もう二度と見ることは出来ないことになってしまっています。

 私の大好きな作品であることは間違いなく、その中でも鮮明に記憶に残っているのは徳川家康に柳生石舟斎(宗矩の父)が宗矩を相手役として「無刀取り」の技を見せるというシーンでした。

 「無刀取り」それは剣術家としては究極の技。太刀を使わずに太刀を持った相手を制圧してしまう技。剣術というのは普通の長さの太刀を使って技を磨いていくと段々太刀の長さが短くなっていってついには「無刀」に至るというのが「道」となっているようです。

 賢覧の場で技を見せる前に石舟斎が息子を目の前に呼び寄せて「見苦しきかな。直して進ぜよう。」と言いつつ息子の頬に紅を薄く指します。それは緊張のあまり顔面蒼白となっている息子をたしなめる意味もありましたが、「人に不快な思いをさせない」ということも「無刀取り」の極意に含まれていることを家康公に見せる意味もあったわけです。

 そして無刀取りの場面。相手に向けて段々と背を丸め異様な姿勢を取りつつ相手に向けて「意」を放っていく石舟斎。打ち込んだ太刀はいつの間にか制せられて、石舟斎の手に渡っていく。家康公もあまりの不思議な展開に自らも太刀を取り向かっていくが、向かい合ったとたんに石舟斎の姿勢の意味するものやその「間積もり」の絶妙さに舌を巻いていく。何故なら家康公自身も一流の剣客だったから、その恐ろしさが解ったわけです。

 この対面により柳生流は江戸幕府の正式な剣術指南になるわけで、「無刀取り」の思想は江戸幕府の三百年の太平を築いていく礎になっていくわけです。

 本当に機会があったらもう一度見てみたいものです。
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