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2014年09月11日23:32

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時の渚で(「Frozen Tide」の情景)

江波さんの「天使」の朗読が終わると、
机の上に静かに横たわっていた青年Yは身を起こし、
今度はそこを長椅子のようにして腰かけ、
白く大きな貝がらを耳に当ててじっと座っている。
思わずジャン・コクトーの詩「耳」を連想してしまった。
”私の耳は貝のから 海の響をなつかしむ”(堀口大學訳)

一方、下手奥から登場した女(美波)は、その前の場面からすでに、
ショートカットからセミロングの金髪へと変身していて、
それまでとまったく違う見知らぬエトランゼのイメージ。
この時照明は、寄せては返す波の動きを作り出し、
波の打ち寄せる渚にしゃがんで、
彼女は何かを探しているように見える。
この波の動きは、二階席から見下ろすと
本当に味わいがあって綺麗だった。

探すものは永遠に見つからず、
それでも永遠に探し続けているような女。
耳に当てた貝から、何事か聴きとっているような青年。
同じ舞台面にいながら、青年と女は視線も交わさず、
まったく別の空間にいるように思える。

この場面で演奏され、歌われているのは
M14「Frozen Tide」(凍てついた潮流)。

moi ici
debout sur le lac
lit de glace
au fond de la nuit
(私はここに 
 湖の上に立つ
 氷のベッド
 夜は深い)
 
et je ne sais pas ce que je fais la
et que la pleine lune fera de moi?
(私は自分が何をしているのか分からない
満月は私をかたちづくるのだろうか)

ボーイソプラノのように澄んだ勝沼恭子さんの声。
湖、氷、夜、満月など、歌詞に登場する言葉は、
皆クールで謎めいている。
そして最後に日本語で語られる詩は、
この場の情景をどことなく連想させて、
儚くも美しい。

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 星が刻む涙
 耳にのこるしじま
 声が消えた街に 
 舟を出そう
 空をかける小舟
 君の歌をのせて
 さくら さくら色に染まる
 青い記憶
 その舟を降りて
 僕は貝の歌を聴く
 炎が消した夢のつぼみ
 花びらが見た森の夢
 夢のつぼみ
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