『
テロ,ライブ』
まだ記憶に新しい『セウォル号転覆事故』。
思い返しても原因も対応も嘆かわしいばかりだが、それを予見していたかのような映画が韓国で作られていた。
何というタイミングかと思うが、眼力のある人物もいたものだ。(笑)
先のカーフェリーの事故の後ではこの映画は絵空事ではない。
テロ行為の生中継の衝撃は9.11を見るまでもなく、世論に与える力は圧倒的である。
娯楽作品の導入の発想としては<ありがち>ではあるが、中々深いところまで問題提起していて考えさせられる。
かつてTVで人気を博したアナウンサー<ユン・ヨンファ>は不祥事でラジオ番組に左遷されていて、妻子にも逃げられたルーザー。
そこへジャーナリストとしては千載一遇のチャンスが訪れる。
ラジオ番組にリスナーからかけられた電話の主がいきなり橋の爆破予告をし、その通りになる。
社会正義よりも出世を考える元キャスターと謎の犯人とのスリリングな駆け引きの幕開け。
賄賂社会ともいわれる韓国の暗部がマスコミや政界を舞台に描かれる一大スペクタクル劇。
韓国社会は立身出世こそ第一であり、セカンドチャンスが与えられにくい社会だという背景もあるのだろうか。
おそらく予算はそれほど大きくないであろうが、演出の巧みさでグイグイと引っ張る。
舞台がラジオブースからほとんど出なかったのは正解だと思う。
世間を巻き込んでのテロ攻撃なのに、広く庶民像を映さないことによって、庶民を蔑ろにした<自己中の集まる場所>の戯画化に成功している。
報道も政治も私利私欲化することの怖さが描かれ、さらに相当ブラックな提示が見られるが、犯人像が解明された後にここまで大がかりな仕掛けができたのかの謎は残る。おそらくは脚本的なアリバイ工作は二の次にしてでも苦言を呈したかったのだろう。脚本を兼ねる監督キム・ビョンウの32歳という若さが感じられる。
ほぼ見えない相手と会話だけでサスペンスを盛り上げるハ・ジョンウの演技は見ごたえ十分。
手持ちカメラの揺れと相まってリアルタイム進行の見事な一体感を見せる。
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