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2014年09月08日22:14

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窓を描く女の子(『Lost Memory Theatre』の反復)

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月のひかり

月が消えたから 
天井に窓を描いた
井戸に月が帰れるように

ひまわり畑が消えたから
南の壁に窓を描いた
日向(ひなた)の風が運べるように

パパに会いたいから
たくさんの窓を描いた
どの窓からも入ってこれるように

窓がさみしそうだったから
鏡を描いた
お互いが見えるように

どこから来たの
どこへ行くの
パパはどこ

私は窓の子どもを産む
鏡の瞳を持ったたくさんの子どもを
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終盤近く、「渦巻きが連れてった」という言葉を、
少し離れて横向きに立つY(山本耕史)と共に繰り返したあと、
M18「integral silence」(完全なる静寂)の
静かで切ないメロディーをバックに、
美波さんが淡々と語る独白場面。

舞台は青い光に彩られ、
ブルーのワンピースを着て、ぽつんと椅子に座る彼女は、
よるべなく心細い夜の子どものよう。
三宅さんのトランペットのソロがむせび泣くようで、
鎮魂曲(レクイエム)のようにも思える。

さみしくて、冷たくて、残酷な世界。
窓もない閉ざされた部屋に彼女はずっといるのだろうか。
「ママのいない、パパと二人だけの生活」を
それまでの場面で語っていたことも思い合わせ、
彼女の父との深い関わりと断絶の孤独が、
むごいほど沁みて来る。

「親に置き去りにされた子ども、
暗がりのなかにひとり取り残された子ども」を連想させる
カポーティの作品世界を連想してしまう。
作家自身、幼いときに母親にホテルに置き去りにされた
悲しい思い出を生涯忘れなかったと語っている。

そういえば、とふいに舞台の初めのあたりを思い出す。
M2「the world i know」の歌に合わせ、
走り出てきて、Yに向かって大きく手振りしつつ、
彼の手をくぐり、押しながら、周りをめぐる彼女の手は、
ずっと四角=窓を描いていたのではなかったか。

記号と言葉は繰り返し反復され、呼応して、
終わることなく回り続ける。
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