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2014年08月23日17:12

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トルーマン・カポーティの「ミリアム」

LMTのパンフレットの中で、江波杏子さんがこう書かれている。
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若い頃好きだったトルーマン・カポーティの小説「ミリアム」が、
一部使われているのも楽しみのひとつ。
私が演じる「婦人」は「ミリアム」の登場人物に重なるところが多く、
場面によって少女から大人、老婆にもなる不思議な存在です。
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「ミリアム」はカポーティが19歳の時(1945年)書いた短編で、
短編集『夜の樹』に収められている。
知名度がとても高く、愛読されている作品とのこと。
少女ミリアムと老未亡人のH.T.ミラー夫人との交流を描く、
現実とも夢ともつかない、スリラー的な雰囲気がある。

映画館の前で二人が出会い、
ミリアムが自分の分のチケットを買ってくれるよう頼むこと、
それからしばらくたった夜遅く、ミラー夫人の家に突然やってきて、
おなかがすいているからサンドイッチが欲しいと要求すること、
飾ってある造花をつまらないということ、
「あたしが来たの、喜んでないみたいね」という台詞まで、
この舞台ではほぼそのままだ。
夫人のカメオのブローチを欲しいと言ったり、
わがまま放題にふるまうミリアム。
また、別の日にはここに住むことにしたと勝手に宣言して、
自分の服をたくさん持ち込む。

美波さんが主に着ている綺麗なラインの紺色のワンピースは、
小説の中でミリアムがコートの下に着ていた
「上品な紺色のワンピース」から来ているのだろう。

今回の作品では、美波さんのミリアムと江波さんのミラー夫人は、
途中で前触れもなくお互いの役柄をぱちっとスイッチを切り替えるように交代し、
江波さんが少女になったり、美波さんが夫人になったりする。
何かのエチュードみたいで面白い。

私は新潮社・世界の現代文学シリーズの『夜の樹』で読んだが、
こちらのサイトからも読むことが出来ます。
よろしければご一読を。

・「ミリアム」
http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/miriam.html

(追記)
訳者によって訳語はかなり印象が変わってくる。
今回の舞台に使われているのは、
『夜の樹』(川本三郎訳、新潮文庫)所収の「ミリアム」のようで、
「私に出来ることなら、喜んで」
「簡単なことよ。わたしのかわりに切符を買ってほしいの」
「犯罪者になった気分よ」
「ハロー」
「造花なんて悲しくない?」
「わたし、歓迎されてないみたいね」等々、
言い回しは殆どそのまま。
舞台の脳内再生のためにはこの訳が一番お勧め。
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