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2014年02月12日23:54

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『足尾から来た女』台詞覚書

http://www.nhk.or.jp/dodra/ashio/index.html
NHK土曜ドラマ
放送日:2014年1月18日(前篇)・25日(後篇)
作:池端俊策
演出:田中正
新田サチ(尾野真千子)田中正造(柄本明)福田英子(鈴木保奈美)
景山楳子(藤村志保)新田信吉(岡田義徳)石川啄木(渡辺大)
原敬(國村隼)

手堅く力強いドラマ。とても感銘を受けた。
百年前の足尾銅山の鉱毒事件が、こんなに強く胸に響いてくるのは、
鉱毒事件によってつぶされる谷中村が、
現代の原発事故の地域の姿と否応なく重なるからだ。
国によって故郷を奪われた主人公サチの疑問と訴えは、
まっすぐな刃のように迫ってくる。
作品の肝となる印象深い台詞部分のみ、書き起こしてみた。
原敬への訴えはすごい迫力だったが、
英子の母親である楳子が語る病院の場面も心に残った。
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*夜、英子の家から帰ってゆく田中正造を灯りを持って送るサチ。
二人の警官が尾行している。

正造:
空は星の数が変わらないから良い。
わが村はどんどん人が減ってゆく。
残ったのは十六軒。
十六軒で戦わねばならない。

サチ:
勝てると思いますか?十六軒で。
私が村に帰るまで、村はありますか?
渡良瀬川がきれいな水になって、
昔のように魚がとれて、
麦や米もたくさんとれて、
そういう村に戻ってますか?
先生が言うように皆で我慢して、
あの村にしがみついて国に訴え続けたら、
そういう村に戻りますか?
私、村に帰りたいんです。
兄(あん)ちゃんだってきっとそうです。
でも結局村は池にされてしまうんじゃないですか。
東京にいると谷中のことなんて誰も心配してないんです。
よその世界のことなんです。
ここには何十万という人がいて、
たった十六軒の村のことより、
こっちがずっと大切なんです。

正造:
お前(め)のあんちゃんもそう言った。
一軒の家より百軒がいい。
村より町、町より都、国はそう考えるってな。
それは違う。
百軒の家のために一軒の家を壊すのは野蛮国だ。
町のために村をつぶすのも野蛮国だ。
サッちゃん、何故野蛮国かわかるか?
都をつくったのは町なんだ。
町をつくったのは村なんだ。
百軒の家も一軒の家から始まったんだ。
その一軒を殺する都は、己の首をしめるようなものだ。
そんなことをする野蛮国は必ず滅びる。
お前は、この国が野蛮国だと思うか?
わしはそうは思わん!
だから戦う、十六軒で。
------------------------------
サチ(ナレーション):
国も県も、私たちの村を見捨てようとしていました。
足尾銅山から流れ出した鉱毒を溜める池として
村を水の底に沈める条例が議会を通ったのです。

*谷中村の生家が引き倒されるのを目の当たりにして、悲憤に震えるサチ。
作業の指図をしている兄・信吉の姿を見つけ、食い下がる。

サチ:
だからって自分のうち壊すの?
自分の村壊すの?
みんなここで生まれたんだよ。
ここで暮らしたいんだよ。
兄(あん)ちゃんにこんなことして欲しくないよ!
兄ちゃん信じたいけど、こんなのヘンだよ。
ひどいよ!

*返す言葉がない信吉。
田中正造がやってきて、彼を厳しく問いただし、打つ。

正造:
よく見ておけ。これが今の日本だ。
家というものは人間がつくった文明そのものだ。
村もそうだ。
それを自分たちの手で壊してる。
銅を手に入れるために、川を汚し、村をつぶし、
そこに住む者たちを殺してんだ。
サッちゃん、わしら、あいつらと16年闘って来て、まだ勝てない。
悔しいーなあー。
-------------------------------
*病院の庭にやってくるサチ。
楳子、他の入院女性たちに本を読んでやっている(啄木の短歌)。

楳子:
”磯ゆけば波来て我の靴跡を消せり
 われはた君忘れゆく”

庭に出てきて何か探している様子の高木(患者)。

高木:
(おずおずと)
僕の耳をこのあたりで見かけませんでしたか?
…さっきうっかり落としてしまって。

楳子:
(戸惑うようすもなく、はっきりと)
ほら、あなたのその足元に落ちてるじゃない。

高木:
あ、ほんとだ

看護婦がやってきて、高木に寄り添うように連れてゆく。

楳子:
(二人を見送って)
あの人はね、日露戦争で頭を撃たれてから、
ずっとああなんですって。
いつも自分の体を拾って歩いてるの。
ここはああいう人がたくさんいるのよ。
世の中から放り出されて、居場所がなくなった人たちが。

----------------------
*茶店で偶然、それと知らずに歌人の石川啄木と知り合ったあと、
英子のお供で訪れた与謝野晶子宅で、彼と再び出会い、
彼の歌が好きだと告げて親しくなるサチ。
一緒に花火を見に行った帰り、飲食店で二人語らう。

サチ:
"己が名を仄かに呼びて涙せし
 十四の春に帰る術なし”…
私も十四の春に戻りたい。
谷中村にまだ畑があって、
父ちゃんも母ちゃんも兄ちゃんもみんな居て…
あの頃に戻りたい。
この詩を読んで同じようなこと考える人、
たくさんいると思います。
でも戻ってゆくところがないから、
ここで頑張るしかない、って。
だから啄木さんも元気出してください。
こんな良い詩がつくれるんだもの。
きっと立派な小説書けますよ。

-----------------------
*車の故障で足止めを余儀なくされた原敬を偶然出見かけたサチ。
一緒にいた英子に、足尾銅山の元・副所長だと教えられ、
意を決して近づいてゆく。

サチ:
お話があります。
私は栃木の谷中村の新田サチと申します。
私の村は今、池の中に沈められようとしています。
どうか助けてください。
私の母は鉱毒の井戸水を飲んで亡くなりました。
42歳でした。
どうか鉱山から鉱毒を流さないでください。
私は家も壊されました。
畑も駄目になりました。
兄も父もいなくなりました。
もう帰るところがありません。
行くところもありません。
先生が鉱毒を止めてくださったら、
みんな戻ってきます。
昔のように村で暮らせます。
お願いします。村を返してください。
私を助けてください。

原敬:
…残念ながら私はもう大臣ではないし、
鉱山の役職も離れた。
そういう話は県知事にでもしてみたらどうかね。

去ろうとする原の背中に石を投げつけるサチ。
---------------
*村に帰って来て、戦いの手助けをしたいというサチに
諭すように語る田中正造。

正造:
土地収用法を撤回させてみせる。
裁判の戦いは法律の戦いだぞ。
お前(め)は字が読めっかい?
わしはこの村に骨をうずめる覚悟でやっておる。
けど、お前は違う。
もしこの村がなくなっても、
ずーっと生き続けなきゃならん。
わしが死んだあと、この村のことを
世の中に訴えていくことは
お前や、他の若い奴の役目だ。
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