クリーブランド美術館展/人間国宝展/特別展『世紀の日本画』
3つの展覧会を結ぶ東京国立博物館と東京都美術館のコラボレーション。
日本美術の粋の三重奏に大満足。
＜人間国宝展＞
まず最初に足を向けたのは、「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」。
（東京国立博物館3-4室）
「国宝 VS 人間国宝」では、工芸の古典の名品と、
人間国宝による代表作を並べて展示。
古典は淡いピンク色の台、現代のものは薄い水色の台に載せられている。
奈良時代の奈良三彩壺の味わいも良かったけれど、
その三彩の技法を生かした加藤卓男氏の「芙蓉」は大ぶりで、
大きなカラーの花が並び咲いているようでダイナミック。
江戸時代の白縮緬地に衝立と鷹の模様が大胆な振袖は、
赤紫の大きなぼかしや、鷹と衝立の水色が白地にくっきりとして、
本当に素敵だった。
並んでいた木村雨山氏の縮緬時友禅訪問着も、黒地いっぱいの花鳥模様で、
壮麗だったけれど、目に焼きつくのは古典の斬新さのほう。
その近くに並ぶ白木綿地雪輪鯉模様の江戸時代の浴衣にも惚れ惚れ。
仙台平の袴だとか博多帯だとか、着物好きには嬉しい逸品ばかり。
芹沢�げ陲侶神�め着物もあるし、
伊勢型紙の「極鮫」や「六矢田格子」「麻」などの展示も嬉しい。
「第二章 現代を生きる工芸を目指して」のコーナーでは、
平田郷陽の衣装人形「抱擁」(1966年)が素晴らしかった。
嬰児を抱く若い母親の初々しさは神々しいほど。
ご自身の娘さんとお孫さんがモデルだそうだが、まるで聖母子のよう。
とにもかくにも素敵なものばかり。
伝統工芸の人間業とは思えぬ逸品揃いで眼福眼福。
＜クリーブランド美術館展＞
1-2室の展示なので、本来はこちらが先なのかもしれないけれど、
まあ早く観たいものから先にみるのは自由でしょう。
こちらは全米屈指の規模と質を誇るクリーブランド美術館の
日本美術コレクションで、ひさびさの里帰り。
雪村、始興、蘆舟、蕭白に暁斎など、人気の絵師が勢揃いとのことだけれど、
通して見ると、なんとなくちょっと変わったユニークなものが多い。
雪村周継の「竜虎図屏風」など、龍も人間くさい顔だし、
龍は猫そのもので全然怖くなくてとぼけた味わい。
仏画にしても、仏の手の爪が長く伸びているものがあってぎょっとした。
こんな爪だと仏というより魔物のように思えてしまう。
西洋絵画も少し並んでいたが、ルソーの「トラとバッファローの戦い」も、
この作品群の雰囲気に共通しているような気がした。
プリミティブ・アートの楽しさというか。
＜特別展『世紀の日本画』＞
国立博物館を出て、道向かい側の煉瓦造りの都美術館へ。
以前来たことはあるけれど、リニューアル後は初めて。
ずいぶん大がかりに変わっていて、地下ロビー階から一階、二階と、
エスカレーター移動しながらぐるぐる回るので、
迷路に入り込んだような気がした。
こちらには近代日本画の巨匠たちの代表作が勢揃い。
前期後期で全作品入れ替えになるとか。これまた見応え十分。
個人的に印象的だった作品。
・川端龍子「佳人好在」
落ち着いた夏座敷と庭の緑。龍子らしい青緑の美しさ。
・小茂田青樹「虫魚画巻」
夜の暗い背景に紫のアザミと白いドクダミの花。
露を含んだ一面の蜘蛛の巣。久しぶりに観たけれど、やはり大好きな世界。
・小倉遊亀「径」（こみち）
母の真似をしてか頭上高く日傘をささげる幼女。
ぱきっとした色彩の明るさと一列に並んだ人物・動物のリズムが楽しい。
・小松均「雪の最上川」
二曲二双が組み合わされて映画のスクリーンのような大きな風景画。
ああ日本の風景。素朴な細やかさが好もしかった。
・安田靫彦
「飛鳥の春の額田王」の歴史画の色も爽やかで良かったけれど、
屏風絵「風神雷神」が青年の姿で描かれているのが新鮮だった。
風景画では日本のだけでなくシルクロードを思わせる
西域の風景も目についたように思う。
それにしても日本画の色は綺麗だなあ。
年々好きになってゆく。
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