『
オーガストウォーズ』
人は辛い現実を直視しづらいもの。まして幼い子供ならなおのこと…。
これは実際に起きた2008年の南オセチア紛争(別名:ロシア-グルジア戦争、8月戦争とも)をベースにモスクワで暮らす母子の愛情を描いたもので、幼少期にありがちな現実と幻想の混濁をうまくアイディアに生かしている。
シングルマザー、不穏な空気の世の中、将来に明るい兆しが見えない厳しい現実においては逃避のために夢想に心を羽ばたかせるほかなかったとしても不思議ではない。
思わぬ事態から戦地に置かれた息子チョーマを助けるがために民間人である母クセーニアが丸腰で戦場を駆け回る姿は誰もが共感を覚えるだろうし、その
勇気と共感性こそが彼女の最大の武器である。
親子愛という主軸を持ちながらもアクションや戦争モノという硬軟揃った味付けが含みを持たせる。
ただ、これはロシア側から見た世界であり、その意味ではまだ記憶に新しい生臭い戦争を判定している点はいかがなものかと思うが、あくまで
親子愛を全面に立てることで回避しているように思える。
戦争以上に大きな枠で捉えているクライマックスシーンが裏付ける。
クセーニアは“女”としては揺らぎがあっても、“母”としては一点の揺るぎもない。
そうした視点が貫かれているからこそイデオロギーの枠を超えて納得できる物語になっていると思われる。
少し残念なのは子供視点で始まるのにいつの間にか母の視点に移り変わる点や、役者に馴染みがない分とっつきにくさがあることか。
映像的な見所は『トランスフォーマー』のような巨大ロボットシーンだろうが、それよりも
ロシア軍全面協力という本物の兵器のオンパレードは必見。
T-72戦車はじめ、機関銃や隊列の組み方などミリオタなら狂喜乱舞しそうな内容が見てとれる。
また携帯の電波ネタなど、細部に信憑性があるのも良い。
飛び交う銃弾の雨の中、敵地に乗り込んでの市街戦の臨場感は只ならぬものがあった。
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