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2013年08月13日00:00

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全力の訴え、全力の応え(『Woman』第5話)

毎回ぐうっと引き込まれる場面の吸引力に圧倒され続けているが、
第5話(7月31日放映)のラスト近い病院場面では、
心を深く揺さぶられた。

難病に侵されていることが確実となった小春。
治療にはお金がかかる。
子どもに心配をかけたくないから、
気づかれぬように薬を飲むことさえままならない。
けれど自分が倒れてしまっては、幼い二人の子の行く末は…
夕暮れ時に流れてきた「遠き山に日は落ちて」のメロディーに心が揺れ、
半ば遠ざかっていた病院へ必死の思いで駆け込むと、
担当の医師は今勤務を終えて帰ろうとするところ。
しかし彼は、彼女の切羽詰まった様子を察して、
すでに受付の終わった病院内に招き入れ、
静かに彼女の切れ切れの話を聞く。

遠くからその様子を見つめ、ひそひそと話す看護師たち。
入れ替わり立ち替わりするその背景から、
迷惑がっている雰囲気がひしひしと感じられ、いたたまれない。
話の途中で無情にもぱちん、と電気が消され、待合室は暗くなる。
それでも彼は彼女の言葉を辛抱強く聞き続ける。
ついに看護師の一人がつかつかと近づき、
「あの、すいませんがまた後日来てもらったらいいんじゃないですか」
と追い出しにかかった時、医師は初めて立ち上がり、
「患者さんが今、病状をお話してるところだ」と遮る。

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診察室で向き合う二人。
小春
「私、死ねないんです。駄目なんです。
 死ぬの駄目なんです。
 今、死ぬと…… 今、死ねないんです。
 絶対、死んだら駄目なんです。
 絶対、駄目なんです。
 何でかって言うと、…お話したかどうかわかりませんけど、
 …子どもがいます。二人、います。
 上の子が女の子で、小学校に入ったばかりで、一年生です。
 下の子が来年から幼稚園で、男の子です。
 七歳と、四歳です。
 …子どもたちの父親は、四年前に事故で亡くなりました。
 なので、…私がいなくなってしまったら、
 子どもたち二人だけに、…あの子たち二人だけになってしまいます。
 だから死ぬの駄目なんです。絶対死んだら駄目なんです。
 あの子たちが大人になるまで、まだ、まだまだずっとかかります。
 二人きりになっちゃうんで死ねません。生きなきゃいけないんです。
 …小さくて、まだ、小さい命なんです。
 私が、守らなくちゃいけない命なんです。
 …ごめんなさい。帰ろうとしてたのに、すみません」

澤村
「…青柳さん。今から医者にあるまじきことを言いますね」

小春
「はい」

澤村
「約束してください。
 青柳さんが今話してくださったお子さんへの思い、
 それは薬より治療より、あなたの命を救う糧となります。
 その思いを忘れないでください。
 あなたのお子さんを思うその気持ちがあれば、病気は治ります。
 僕が全力で治療にあたります。
 覚悟なさってください。
 死ぬ覚悟じゃありませんよ。
 生きる覚悟です。
 よろしいですか。
 青柳さん。
 お母さん」
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この、切れ切れの、堂々巡りのような、
こみあげてくる涙をぬぐいながらの、必死の訴えに、
途中で口をはさまず、ただ黙って静かに受け止める澤村医師。
「その気持ちがあれば、病気は治ります。
 僕が全力で治療にあたります」
と彼が言ってくれた時、不覚にも涙がこぼれた。

彼女は全身全霊をこめて訴えた。
彼は全身全霊をこめてそれに応えた。
こんな切羽詰まった絶体絶命の状況のなかで、
それでもちゃんと受け止めて、希望を指し示すひとがいて本当に良かった。
受け止める彼が、仕事着の白衣を脱いだあとのラフな普段着姿で、
医師と患者というより、人間対人間の関係に見えたのも良かった。

満島ひかりの入魂の演技は言わずもがな、
澤村役の高橋一生、素晴らしい佇まい。
出色の名場面だった。
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