『
ザ・ディープ』
B級のパニック映画のような邦題だが、1984年に実際にアイスランド沖で起きた海難事件を基に描かれたもの。(同名のニック・ノルティ主演映画とは別物)
前半の苛酷なサバイバルと後半の驚く展開が見もの。
冬のアイスランドの海の冷たさはよく伝わるが、「ザ・ディープ」と冠するほど海に深みは感じられない。
しかし、漆黒の闇の中で漂う姿はリアリティを感じさせる映像。
ことさらスペクタクル映画にする気はなかったのだろう。作品の性質上、それは理解できる。
死を直前にして、走馬灯のように過去が蘇るのは人間の本質なのだろうか。
表現がちょっとコミカルで微笑ましくもある。
船員たちの家庭人としての姿を描く前半があっての海難事故の“深み”だろうが、伏線らしき小道具が雑然として整理されていない印象も受ける。
遭難事故の悲惨さを描いた映画は珍しくないが、
この映画の特色が現れるのは、むしろ生還後の待遇かもしれない。
凍てつく海から文字通り<奇跡の生還>を遂げて一躍時の人となって…、普通の話ならそこで終わるだろう。
本作の“ディープさ”はそこから始まるのだ。
これは見た人それぞれが感じて欲しいので、触れないでおく。
もちろん、冬の北欧の海難事故の恐ろしさは言葉では言い表せないだろうが、
真に不可解で恐ろしいのは人間の方なのかも知れない。
アイスランドならではの厳しい環境や生還後の決断も「
出口のない海」でもがく姿に思える。
第85回アカデミー賞外国語部門アイスランド選出作品
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