新装成った歌舞伎座にも足を運びたいと思いながら、
芸劇通いで忙しかったり、体調を崩したりで、すっかり出遅れてしまい、
結局頼みの綱の幕見席に並んだのは前楽(27日)。
しかし朝8時台の到着にして、すでに目当ての「お祭り」は札止めでがっくり。
せっかくだからこの日は二幕目の「熊谷陣屋」のみ観た。
もちろんこれはこれで良かったけれど、
友人から「あれだけは観ておいたほうが良いよ」と言われた、
勘九郎くんの愛息七緒八くんの舞台姿が見られないのは、なんとしても残念。
千秋楽の日曜日はことに人も増えるとは分かっていたが、
気合いを入れ直して本日再び早朝から並び、なんとか立見でもぐり込めた。
華やかな「鶴寿千歳」の踊りのあと、
うってかわって粋な鳶頭と芸者たちの江戸前の世界。
勘三郎さんが鳶頭姿で平成中村座に登場したのを観てから、
まだ一年半しかたってないのに、もうここにはいらっしゃらないんだなあ。
「お祭り」は、病などで休演していた役者の復帰舞台でよく演じられる。
「待ってました!」「待っていたとはありがたい」というやりとりが、
復帰を待ちかねた観客と役者の気持ちに重ねられて、気持ちの良い演目。
そういえば今回は「待っていたとは…」のくだりはなかったけれど、
何と言っても、おん年二歳の七緒八くんが、
勘九郎パパに手を引かれて花道を出るのが見もの。
「息子の七緒八も連れてまいりました」との台詞も入る。
初日の様子はニュースなどでちらっと見たけれど、まあ可愛いのなんの。
ちっちゃな子が一丁前に鳶の扮装をしてるだけでもたまらないのだが、
こういう次代を担う子の初舞台に立ち会えるのは、
歌舞伎ファンとして本当に嬉しい。
他の役者が踊っている間は、
鳶頭松吉の勘九郎、芸者おなかの七之助が
七緒八くんをはさんで緋毛氈の床几に座っていたのだが、
様子に気を付け、扇のことなど何かと気を配っていたのは七之助のほう。
なんだかお母さんのようで、鳶頭と芸者が若夫婦、この子が一粒種に見えた。
感心したのは、七緒八くんが退屈もせずむずかりもせず、
すでにして舞台になじんでいること。
床几におとなしく腰かけて、足をぷらぷらさせたりしつつ、
目の前で繰り広げられる踊りをちゃんと見て、
手にした扇をそれに合わせてパン、と開いたり閉じたり、
手振りの真似をしてちいさなお手々をひらひらさせたり、
見ているだけで顔がほころんでしまう。
栴檀は双葉より芳し。すくすく成長していって欲しい。
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