『
舟を編む』
「男と女をどう説明しているかをまず見る。」
高校時代の国語教師が辞書を選ぶポイントとして、こう語っていた。
単純に生物学的なことを示すのか、<文学的>な表現にまで及ぶのか…。
普段何気なく使っている辞書の表現は様々で、確かに各々に特色がある。
これは辞書作りの内幕を描いた三浦しをん著の同名小説の映画化。
出版不況と呼ばれる昨今だからこそ、本に対する愛着ある発想が心憎い。
時代は1995年、まだ出版業界が今より体力のあった頃、新しい辞書『大渡海』を作る話。
<完璧で当たり前>と思われる辞書作りの難しさやその制作期間の長さ、辞書の重要性と比べて置かれた環境の劣悪さに思わず声を上げそうになる。
先輩から受け継がれた<言葉>、次の世代に受け継ぐための影の作業。
必然的にそこには人と人との繋がりが生まれる。
まずはキャスティングが素晴らしい。
主演の草食系オタク男子、馬締(まじめ)を演じた
松田龍平には、もはや親の肩書きは不要と思えるほど的確な役作りで、透明感があり芯のしっかりしたヒロインに宮崎あおい、出版社の先輩でチャラ男のオダギリジョーとキャラ立ちのバランスも良い。
加えて夫婦役に
加藤剛と八千草薫という組み合わせは“昭和人間”には涙もの。
石井裕也監督(『川の底からこんにちは』など)の演出はオーソドックスな印象。
主人公、馬締にならいマジメな演出を心がけたのか。(笑)
…とはいうものの、監督が得意とするコミカルなタッチは随所に生きている。
こんな時代だからこそ、不器用でも足元を見つめ、浮かれず愚鈍なまでまっすぐに努力する主人公の話にはグッと来るものがある。
辞書つくりの
古臭さを思わせる主人公の住居設定も納得。
さて、高校時代の恩師に「男と女」をどう説明するか問われたらなんと答えよう…。
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