”期待にこたえて予想を裏切る”三谷さんらしい作品。
ミステリー仕立て、入れ子仕立てで、色々仕掛けがあった。
セント＝ヘレナでのナポレオンを取り巻く人々については、
従者マルシャンの「ナポレオン最期の日」などで予習をしていたから、
史実のお付きたちはもっと居たのに、
登場人物はずいぶん限定されているんだなと思っていたが、
最期まで付き添ったベルトラン伯爵やら、
途中で去るラス・カーズ伯爵やグルーゴウ将軍やら、
毒入りワインで死んでしまう料理長チブリーズやらは、
必要に応じて簡単な人形が置かれる。
なるほどそう来たか、と面白かった。
実力派の役者さんばかりだし、それぞれに見せ場があって見応えは充分。
プレビュー初日にしてかなりみっちりと練られているように感じる。
これでさらに深まり融合してゆくことを考えると、わくわくしてしまう。
野田さんのナポレオンは、まさに野田さんという感じ。
いつも通りの野田さん独自のリズムで、台詞を聞いてるだけでおかしいし、
身体をいじめてるんじゃないかと思うくらい動き回る。
内野さんの舞台姿はお初だが、メリハリもはっきりしていて素晴らしい。
天海さんの華やかさ、きっぱりした強さはやはり際立って素敵。
舞台の今井さんは安定の存在感。他のかたとのバランスがすごく良い。
浅利くんは本当に無口に徹し、てきぱきよく働く従者ぶりだったが、
これもどんでん返しがある役なんですね。
長身の役者たちの中で、野田さんと彼だけが小柄で子どものように見えた。
モントロンの台詞は本当に多い。
回想のなかで、9歳、17歳、30代を演じ分けるのも自在だし、顔芸も見事。
「その目はやめろ！」と言われる時の、強調した目の表情がたまらない。
おまけに軍服を着たままの姿でギターをかかえ、
流しみたいに演奏までしてくれるとは。
三谷さんはまた「これもやらせてみよう」と思いついたのかも。
衣装や小道具など細かいことは追々書くとして、
とりあえずステージシートからの見え方について。
座席表の位置から、役者さんと共にステージの上に居るのかと思って、
ちょっと緊張していたのだが、そういうわけではなかった。
通常の客席側から見ると、今回のステージは縦長に細く突き出ていて、
それを囲むように左右それぞれ5列×10の席が設けてある。
ステージに近いほうからABCDEの列順、舞台手前から奥に向けて1〜10の順番。
つまり席はステージの上ではなく、あくまで下から見上げる形。
ただ正面からではなく、側面から見ることになるので、視点が全然違う。
開幕前、席についた時、ステージ上のベンチやベッドや椅子を見て、
椅子の背を見るような位置だから、これに座った人の顔は見られないな、
とちょっと不安になったのだが、果たしてそういう場面もあった。
背中しか見えない時は、今どんな表情をしているのかやきもきしてしまう。
しかし背もたれのある椅子は結構あちこちに位置が置きかえられるので、
片側のステージシートからのみ、顔が真正面に観られることもある。
その間、逆側や通常客席からは背中や側面しか見えない。
三方の客席に囲まれた舟のようなステージだから、
意図的にそれぞれの面に向く時間を作ってあるのかもしれないけれど、
座った面によって、見え方はがらりと違ってくるだろう。
同時に全方位を見る事は出来ないから、
無いものねだりで常に見えないところが気になりそう。
ステージシートはやはり側面なので、正面奥が見えにくい。
奥に投影される映像は、正面席からでないとインパクトが弱い感じ。
役者の出入りは舞台正面奥の扉だけでなく、その扉の両脇にある階段と、
左右のステージシートの1番の位置に近い通路奥の扉、
さらに通常客席下手側の通路近くの扉、とさまざま。
階段を上がってくるのは、急にせりあがってくる感じで意表を突かれる。
下手側通路は花道のように結構使われていた。
次の観劇日はまた全然違う席種なので、その視点を堪能したい。
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