21日朝、日曜美術館の「アートシーン」の紹介を見て、
あ、前期がもうじき終わってしまう、とあわてて出向いた。
何せ前期・後期で全点展示替えしてしまう大規模な回顧展なのだ。
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H241011tsukiokayoshitoshi.html
芳年と言えば何と言っても血みどろ絵の印象が強いけれど、
入ってすぐの、畳で掛け軸を見る場所の最初に飾ってあったのは、
師匠・歌川国芳のやさしい顔の肖像たっだので、なんだかほっこりした。
これは明治6年、国芳の十三回忌の折に描かれたもの。
国芳関連本には必ずといっていいほど載っているからお馴染み。
猫を身近において機嫌良さそうな顔の国芳を見ていると、
芳年の師匠への愛情をしみじみ感じる。
武者絵などの勇ましさは師匠好みの系譜だが、
やっぱりこのひとの絵にあふれる血の赤の量は半端ない。
血糊のどろっとした感じを出すために、膠も混ぜたという凝りよう。
生々しく酸鼻な状況を描きながらも貫かれた美意識がすごい。
だから魅入られてしまうのだ。
歌舞伎好きとしては、役者絵や芝居絵も嬉しい。
高熱に苦しむ清盛入道だの、碇を身体につけて入水する知盛、
安徳天皇を抱き寄せる二位尼など、
現在放映中の大河ドラマや「大物浦の段」をまざまざと思い出す。
全体を通して感じるのは、初期の頃の昔ながらの浮世絵から、
どんどん西洋的なテクニックが目立ってくること。
もはや現代のイラスト、劇画という感じ。
ダイナミックな構図や下絵の線の力強さにわくわくしてしまう。
古典の世界と同時に、新時代の風俗描写も新鮮。
鏡花と同時代を生きたひとなのだなあ、と改めて思う。
そういえば鏡花は有名な「奥州安達がひとつ家の図」のファンだった。
最後に回った地下の第三会場の梅若丸の絵には魅了された。
さらわれて母と引き離され、病を得てはかなく果てる哀れな少年。
名高い「隅田川」の世界だけれど、その洗練されたタッチ、
散る花弁、川面に映る月の煌めき。眺め入ってしまった。
良いなあ。本当に美しい。
後期も楽しみ!
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